全力でペダルを漕ぎ、あっという間にAの目前まで迫る。
ニヤニヤ顔が一瞬でギョッとなり2、3歩後ずさったAの鼻先を自転車が通過する。
舌打ちして急ブレーキをかけ、Uターンして引き攣った顔のA目掛けて再び全力でペダルを漕ぐ。
叫び声をあげて逃げ惑うAを追いかけ回し、助走してスピードの乗った自転車で轢いた。
タイヤはお尻に、カゴは背中に綺麗に入り、Aは漫画のワンシーンの様にエビ反って宙を飛んだ。
受け身一つ取れずにアスファルトの地面に顔からぶっ倒れるAを一瞥し、目標をBに切り替える。
自転車を再起動させ、歩道の隅で震えて座り込んでいたBに迫る。
Bは全身でビクゥッ!と震えて四つん這いで逃げ出し、2歩目で歩道脇の田んぼに落下した。
自分はドリフト急ブレーキで田んぼギリギリに止まり、舌打ちしながらBを見下ろした。
歩道より低い水田に1回転して頭から落ちたBは見事に泥水で汚れ、茫然とした表情で自分を見上げた。
「落ちんなよ轢き損なったわ糞が」と吐き捨てた。
そのまま家に帰り、在宅中の母を見て「自転車がー!」と泣きついた。
「何もしてないのにいきなり石投げられたー!自転車に傷がー!」
と大泣きする我が子が落ち着くまであやした母はフロントの傷を見に行った自転車の、タイヤカバーが曲がりカゴが凹んでいる事に気づいて一騒ぎしたが割愛。
翌日、登校時に絆創膏を顔に沢山貼った人がいると思ったらAだった。
姉が「なにそれププー」と馬鹿にしてAがこちらを向き、隣にいる自分を見つけた。
怒りの表情が一変、姉が囃し立てても何も言い返さず、足早に学校へ入って行った。
それ以降は、とても平和な学校生活が送れるようになった。
以上が8歳の女子が3つ年上の男子に行った報復劇。
過剰防衛気味だが、未だに一切後悔はしてない。