結論から言うと失敗だった。
母は相変わらずだったけど、心を整理する方法も聞き流し方も昔から使ってきたものを流用すればよかったから逆に楽だった。
無神経で刺々しい発言は昔からだったから平気だった。
鈍感なところも無視した。
怒鳴られるのも馴れていた。
それでも辛いことは一つだけあった。
母は二人目の子供を作ることを執拗に求めてきた。
娘だけで十分とか今のご時世だと一人だけで精一杯だとか、軽い調子で言っても駄目だった。
やれ昔は何人も産んで当然だった、やれ昔は男の子が生まれるまで頑張った、やれ今の女は甘やかされている、やれ兄弟がいないと寂しい。
一回目は聞き流した。
二回目も耐えた。
十回も同じこと言われて流石に怒りで死にそうになった。
「私が弟との差を訴えた時、あんたは「最初の子供だから分からなかった。仕方ない」とか言い訳して詫びの一言も言わなかった」
「親にとってはたくさんの子供の一人でも、子供にとってはたった一度の人生」
「私は自分の子供の人生を今後の子育てのための実験台として消費したくない」
「実の親にまで男の子と差別されてこの世界に絶望する女の子を増やしたくない」
ずっと言いたかったこと、当時は言葉にできなくて伝えられなかったことを吐き出した。
ティーカップを投げ付けてきた母を置いて帰った。
姑さんに
「どうしてもお母さんに会いたいの?」
と尋ねられて、ああ無理して会う必要はなかったんだなぁって、胸が軽くなった。
はっきりと断絶したこともあって、今は昔よりずっ と落ち着いた気持ちで過ごせてる。