姉は地面に転がったまま動かない。
慌てて階段を降りて近づくと、
「足が、足首が・・・」と言って呻く。
すぐに駅員さんを呼びに行った。
駅員さんは横に転がって呻く姉を見、そして私を見、姉の顔にかかる髪を払って顔を覗き込むようにしながら衝撃的なことを言い出した。
「大丈夫かなぁ。どこか、怪我しちゃった?痛い?何処が痛い?お名前は言えるかなぁ?」
私がポカーンとしてると、駅員さんが
「この子のお知り合いの方でしょうか?保護者の方ですか?親御さんの連絡先とかわかりますか?もし解らなかったら中学校だけでも」
いやいや、この人私の姉です!大人です!すみません姉が動けないって相当やばいので救急車を!
あまりの恥ずかしさに顔から火が出そうだった。
結局姉は足のアキレス腱を切っていたそうで、押された時足を無理に踏ん張った段階で切れていたらしく、着地の時にこの世のものとは思えない激痛に襲われていたらしい。
姉は骨折もしていて即座に入院になり、治療のために足に鉄の棒がたくさん刺さっていた。
姉も転がっているとき、駅員さんの発言に耳を疑い、
「なんつーことを言い出すんだ、というか痛みで呻く年頃の女性の顔をそんな間近で見ないでくれ」
と恥ずかしさと痛みで消えてしまいたかったそうだ。