もう10年以上前の話。修羅場という程じゃないけど
結構混んでた山手線で、座ってた俺。
目の前に立ってたカップル。
二人して足元をキョロキョロと探し物をしてる様子なので、
自分の足の下にでもあったらまずいかと思って
俺も足を上げてみたりしたけど別になにもない。
切符でも落としたんだろと思ってたんだけど、
二人の様子が段々真剣になってきたし、
なにしろ目の前でやってるので、
しかたなく声をかけてみることにしました。
「何か落し物ですか」
すると男性の方が
「あ、はい。あの、結婚指輪を」
えっ、と思ったその瞬間…
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周りの乗客がぶわっと一斉に振り返りました。
あまりの超反応に指輪の事よりもそっちにびっくりして、
3人でえっ?えっ?とキョドってしまいました。
で、それから大捜索開始。
声の届いた範囲の人たち全員が指輪捜索を始めた訳です。
でも日本人つーか東京人つーか、
誰も一言もしゃべらないんだよね。
みんな、つり革につかまった状態で下を覗きこみ、
踏んだら大変だからそっと足を上げ下げ。無言で。
それを周り中が一斉にやってる様子はどう見てもゾンビ映画でした。
当のカップルというかご夫婦は、
あまりの光景に真っ赤になって固まってしまい、
身動きひとつできない様子でした。
しばらくそんな大騒ぎ(でも無言)したものの指輪は見つからず、
皆あきらめて車内も徐々に落ち着いてきました。
そこで旦那が、あきらめたのか開き直ったのか、ボソッと言ったのです。
「しょーがないな。こりゃ離婚するしかないか」と。
俺は(うわあ、なんてこと言うんだよ、奥さん激怒するだろ)と思い、
おそるおそる奥さんの方を見ると、
なんと奥さんはニコニコッと笑って、
「そしたらまた結婚しようねー」だって。
当時独り身だった俺は感動し、
(すげえ、こんなできた奥さんが欲しい。俺と結婚してくれ)と思いました。
でも、周りの乗客はなんとなくムッとした様子で、
中にはチラ見しつつ(ふざけんなバカップルが)という顔してる人もいました。
無理もないか。
結局、指輪は俺の隣で騒ぎの間中
ずっと口開いて爆睡してたおっさんの足の下にありましたとさ。