まず、私は、ネットで霊感商法系のサイトを探しまくった。
子宝に恵まれる祈祷とか、水子霊の因縁を解くとか、その手のやつ。
で、Kさんの名前で、その手の霊感業者に十通以上の資料請求をした。
それから一週間もしないうちに、ポスト用ゴミ箱に、
Kさん宛の「その手」の封筒が何通も捨てられ始めた。
あの手の業者に連絡すると、名簿みたいなのが回るらしく、
私が請求してない業者からのものも来た。
薄いものは破られたりしてたが、そのままのものは、
もう一度、Kさん宅のポストに投函した。
面白くなってきた私は、幸運グッズの業者にも、
Kさんの名前で十通以上の資料請求。
これまた、カタログや資料がガンガン来ていた。
資料請求から3週間ぐらいして、Kさんのお宅に消火器点検の名目で訪問すると、Kさんは目にくまをつくっていた。
そして、私は祖父と父、兄と姉に提案をした。
「町内会のお祭りとは別に、うちの管理してるマンションのお子さんたちに
ひな祭りやこどもの日、ハロウィンなどでお菓子を配るのはどうだろう」と。
子供好きの祖父と父は大賛成、
兄と姉も町おこしならぬマンションおこしは面白いと賛成。
表玄関前が広く、小さな公園が隣接してるので、イベントをやりやすいと理由をつけ、
Kさんの住んでるマンションの前にイベントテントを張り、お菓子配り場にした。
お菓子を貰いに、うちが管理してるマンションの小学4年生以下の子たちが集まった。
うちの娘や息子は、配る係りさんとして手伝った。
Kさんは、イベントでキャッキャッと喜ぶ子どもたちを見て、複雑な表情をしていた。
不動産情報誌にそのイベントの記事が紹介され、
うちの管理するマンションには子連れ家族が増えた。
私は、なるべくKさんの住んでるマンションに
子供がいる家族が入居できるよう、祖父を説得した。
顔を見るたび、Kさんの表情が暗くなっていくのが楽しくてたまらなかった。
Kさんが引っ越してきてから1年半ほどして、弱ったKさんから
「部屋でお茶をしないか」と声をかけられた。
私は仕事の合間に「30分だけ」とKさんの部屋におじゃました。
Kさんからは「もう40歳になるのに子供が出来ない」と半泣きの愚痴を聞かされた。
私は超ポジティブに励ましに励ました。
「諦めちゃダメですよ!
Kさんは出来ます、頑張って!
子供なんて、数撃ちゃ当たるもんです!
諦めずに頑張らなくっちゃ!
子供って可愛いですよ!
どんなに大変に思えても、どんなに苦労しても、
子供の笑顔で全て忘れられるんです!
子供のいない人生なんて考えられませんよ!
私はどれだけ子供たちに助けられてることか!
Kさんの子供だったら、きっと可愛いですよ!
羨ましいなあ!」
そんなことばっかり笑顔満面で、無駄に元気よくぶちかました。
Kさんは、それから2年半後に引っ越した。
離婚したらしい。
引越の手続きに来たKさんは、げっそり痩せて、どす黒い顔をしていた。
ああ、私の復讐は済んだな、と思った。