真っ赤なゆで蛸みたいな、画伯みたいなのが入ってきた。
鼻血を流して泣きじゃくる男の子の手を引っ張りながら。
「売れない言うた店員出てこいやああああゴラアアアアア!」
「責任者呼べええええ殺すぞーーー!」
と叫びながらレジ台を小木曽の如くバンバンされていたら、店長が飛び出してきた。
どうされましましたお客様、とオドオド尋ねる店長だったが、怒鳴られてさらにオロオロ。
「売れないってなんでだコラーーー!ガキだからナメてんのか!親が行かせてんの位分かるだろボケが!」
と、とにかく怒鳴る怒鳴る。
両腕はずっと机バンバン。売り物のライターとかも投げてたかな。
今でこそそういう時のマニュアルはあるかもしれないが、当時(の数年前)はまだお使いの子供には平気で販売してた時代だったので、
店長もあまり毅然とした態度で客に接することができていなかった。
ただ駅前だったのが幸いしてか、どなたかお客様が警察を呼んできてくれて直ぐに外に連れ出してくれた。
が、一緒に出ていく男の子の後ろ姿を見て驚愕、腕の関節があり得ない方向に曲がっていた。
たぶん折れていたと思う。
店に被害があったわけではないのでその後どうなったかまでは詳しくは分からないけれど、
相変わらずごった返した店内が静まり返り、シーンとした中BGMだけが静かに流れる様は修羅場だった。