残っていたご近所さんたちが、ト運や先に寄こした代理人の様子がおかしいと男性何人かで懐中電灯を持って事故現場に足を運んでくれた。
ご近所の奥さんたちが私についていてくれて、言われるまま何か飲んだり食べたりしていた。
そのころ事故現場に残っていたブレーキ痕から、事故の真相がト運の証言とまったく違うと知った男性陣がその場で警察を呼んで現場検証のやり直しをさせていた。
結論から言うと、父が運転していた車に突っこんだのはトラックのほうだった。
その後、ト運と代理人としてやってきた男が捕まった。
代理人としてやってきたのはト運の勤め先の会社の人間で、トラックの保険が切れているため芝居を打ったと自供。ト運の居眠り運転が原因でカーブに気づくのが遅れたことで起こった事故だったこともわかった。
ここまでが第二の修羅場。
警察は信用できないとこの時に学んだ。
ご近所さんが不審に思って事故現場に足を運んでくれなければ、「死人に口なし」で父の過失としてすべて片付けられていただろう。
第三の修羅場はそれから一週間もしないうちに起きた。
おしどり夫婦だった父が亡くなって、入院していた母がそのまま他界。
後を追うように心臓の発作で亡くなった。
父の遺品整理もまだできていない家で、今度は母の葬儀をした。
このときもご近所さんにずいぶんと助けてもらった。
天涯孤独になった私だが、第四の修羅場は遺産よこせとやってきた母の母。母方の祖母。
なぜ私に「親戚」も「じーちゃん、ばーちゃん」がいなかったのかよくわかった。
はじめて会った母方の祖母は、テンプレ通りの毒だった。
可愛い娘をさらって行ったと父を罵ったが、その可愛い娘の仏前で手を合わせようともしなかった。
少なくとも、普通のばーちゃんは両親を亡くした孫に「高校生が持つには分不相応だから遺産はこっちに寄こしなさい」とは言わないと思う。
自宅が借家ではなく持ち家だと知るなり、「ここに住んであげるからアンタはアパートでも借りなさい」とも言わない。言わないですよね???
実の祖母らしき人物に、危うく身ぐるみを剥がされかけた。
大学進学を控えていた当時の私には戸建の家の管理はできず、泣く泣く売却。
父の遺産やら保険金やら何やらで高校生が持て余すほど大金を手にしたことであれほど親身になってくれたご近所の一部が豹変したのも修羅場。
あの一か月でかなりの人間不信に陥った。
せっかく推薦で入れた大学にも通えなくなるのではと危ぶまれたが、当時の担任や教頭先生の助けを借りてどうにか卒業。
担任が進学した先で住むアパートを探すのを手伝ってくれて、保証人になってくれなければ、住むところを探すのも大変だったと思う。
若い女の子が大金を持っているのは危険だから通帳ごと貸金庫に預けなさいと知恵を授けてくれた教頭先生もありがとう。
どこから漏れたのか、「小金持ちの身寄りのない大学生」に寄って来る人たちが後を絶たなかったのも修羅場といえば修羅場。
豹変したご近所さんあたりか、母の実母さんあたりか、リーク主はわかりません。
私自身は人間不信の塊だったので自分から「実は」何て言わなかったし、ブランドで身を固めたお嬢様ってわけでもなかったです。