祖父が死んで、書斎を整理していたらとんでもない量の手紙が見つかった。
中を見て見ると、とある女性へ宛てたものでその女性への思慕の情が書き連ねてあった。
祖父は18歳の頃から3日間隔で60年以上、好きな女性に手紙を送ることなく書き続けていた。
どちらかと言うと、手紙は日記調で、日常の出来事や仕事の不満などが連綿と続いていた。
中には父である息子が生まれた喜びや孫である自分が生まれた時の心境などが書かれてあった。
手紙には祖父の半生と言うか、人となりと言うか、祖父の人格が描かれていて個人的には読んでいて楽しかった。(祖父は小説家を目指していたこともあって、読み応えもあった)
問題だったのがそれが片恋への手紙だと言うことだった。
それを見た祖母は発狂し、泣き喚き、落ち込み、壊れていった。
家族総出で祖母を宥めようとするものの、祖母は日に日におかしくなっていった。
晩年、祖母は
「あの世にいるあの人に届くように」
と、祖父への恨み辛みを呪詛のように手紙に書き留めていたのが心苦しかった。
手紙の内容を見る限り、祖父は必ずしも祖母を蔑ろにしているわけではなかったし、生前は仲の良い老夫婦然としていたから余計に辛かった。
片恋の相手への相当量の手紙っていうインパクトのあるもの見せられたら、確かにショックだろうけどね。
なぜ、祖父がそのようなものを残したのか、その理由は…