私には従姉がいる。
というか、私は20人近くいるイトコの中で末娘で男は弟ひとりだけ。
父方の従姉も5人いるけど、祖母に似ているのは12歳年上の従姉と私だけ。
その従姉の結婚式で。
祖母は美人で、昔有名画家のモデルになって親に絶縁され、その後名家の次男で将校さんだった祖父に見初められ、親の命令でイヤイヤ祖父と結婚させられた人。
名家の次男って、相続するものはなかったんだけどね。
将校さんだったので親にしてみれば良縁だったのだと思う。
戦死してしまったので、戦後は生活が苦しかったそう。
そんな結婚生活だったため、祖母は祖父似の父を嫌っていて、同居していたけど喧嘩ばっかり。
父と祖母は二人で躍起になって母を自分の味方にしようとしてた。
祖母は初孫で自分に似ている従姉を溺愛していた。
私は見飽きた女孫だし、祖母に似ているものの、祖母や従姉程美人ではなく、国家資格餅の従姉とは雲泥の差の底辺高校出身OL。
従姉の花婿は従姉より5歳年下。
見栄っ張りの祖母が大満足の高学歴、高収入。
容姿は普通。
その結婚式で、私は成人式に着たばかりの振り袖を着たんだけど、着付けの前に花婿に挨拶。
花婿は
「従姉ちゃんによく似ている」
と驚いていた様子。
私の着付けと花嫁の着付けはほぼ同時に終わり、私は付き添いみたいに花嫁と控室に向かった。
花嫁を見た花婿、感動のあまり言葉もなく、緊張していてカチカチに固まって座ってた。
親族紹介だのなんだの終わって、神前式で結婚式が始まった。
私は親族席の一番下座に座ってビデオ撮ってた。
神前式は初めてだったので、私は好奇心いっぱいで画面を見つめていた。
そうしたら、突然花婿が手にした榊を放り投げて
「やっぱり結婚なんかいやだ!!結婚止める」
と騒ぎ出して、みんな茫然。
あれー、この人どうしちゃったんだろ、やっぱ年上はイヤなのかなぁ、なんて、思った。
パニックになってる従姉親やら卒倒しそうな祖母の面倒見るのはやっぱ下っ端の私なんだろうなぁ、着物脱がなきゃ
でもその前に写真撮りたいなぁ、なんてとりとめなく考えた。
花婿の
「ぼくはあの子と結婚したい」
宣言で、あの子って誰よ、と思いつつ顔をあげると、親族がみんな私を見てる。
わけもわからず、えっと思いつつ花婿を見たら、なんか、私を指さしてるじゃないですか。
もう、ビックリとかそんなもんじゃなくて、漫画みたいに、振り返って私の後ろに誰かいるのか探しちゃいましたよ。
でも間違いなく、花婿が指さしてるのは私。
えっ、何で、何なの?私?私なの?って感じで、パニックになった時ってわけのわかんない考えが高速で脳内を駆け巡るのね…。
そのうちに、気づいたら目の前に祖母が立ってました。
そして、ひっぱたかれました。顔を力いっぱい。
親にも叩かれた事なんかなかったし、今度はショックで茫然。頭の中真っ白。
撮っていたビデオを見ると、写っているのはわたしの草履だけなんですけど、声はばっちり。
お前が花婿を寝取ったのか、いつだ、挨拶に来た時か(祖母に結婚のあいさつに来た日は私は留守だった)
お前のお相手はろくな男じゃない、だから従姉の彼氏が欲しかったんだろう、などなど、散々言われました。
祖母の知っている私の恋人は高校時代の先輩で、確かに底辺高校の出身。
うちに来る時はラフな格好しているし、ピアスしているし茶髪だし車も派手なスポーツカー。
確かに祖母の好みではないだろうけど、私にはいい彼氏で大好きなんだけど。
着物の衿掴まれてゆっさゆっさ揺さぶられ、親族が止めに入り、でも祖母は暴れて手が付けられない。
そうしたら、花婿が
「彼女は悪くありません」
なんて叫んで更に祖母ヒートアップ。
なのに花婿私にツカツカ近づいてきたと思ったら、私の手を握って
「ぼくと結婚してください」
と言った…。
もう手が付けられない程混乱した式場内。
神主さんが怒って全員退場、披露宴は中止、会議室みたいなところで話し合いになりました。
んで、その時に花婿が言った「心変わり」の理由というのが…