彼はこの場を早く切り上げたかったのか、目に見えて焦っていた。
彼「●●(私)帰ろう!A子さん、お疲れ様!」
私はなぜA子さんが泣いているのに突き放つ言い方をするのかカチンと来て、回してきた手を振り払ってA子に近づいた。
私「A子さん・・・なんで泣いているの?何かあったんですか?」
A子「・・・・ヒック・・・いたっていい・・・ヒック」
私「へ?」
A子「彼女がいても、私よかったんです!あの言葉、信じて待ってるから!」
A子はそう叫び走っていってしまった。
しばらく呆然とする私と彼。
何分か経った後、彼が何事もなかったかのように「帰ろうか!」
と話しかけてきた。
私「A子さんて何?単なる後輩じゃないでしょ?」
彼「本当に何もないし、このことは家で話そう。ね?」
私「今ここで話しなさいよ!」
彼は何度も帰ろうと催促してきたが、私の頑なな態度に諦めた様子だった。
彼「・・・・わかった。A子は俺の事を好きだと言ってくれていた。次第に俺も彼女の事が好きになっていた。」
私はこの言葉を聞いた瞬間、全身が脈打っているのがわかった。
私「・・・好きって何よ!両思いって事?じゃあ私は何なの!?」
多分こう言ったと思う。記憶がない。
彼「お前は最近連日仕事で残業しているから寂しかった・・・
A子はその心の隙間を埋めてくれた。
でも今日分かった!A子とは別れるから一緒に帰ろう?」
私「ふざけないでよ!!!!」
怒りの頂点に達した私は作った弁当を投げ捨て、自転車をかっ飛ばし訳もなく駅へ向かった。
・・・・そのまま1時間以上かけて電車に乗り、私の実家へ逃げた。
泣きながら玄関に立つ私を見て家族はビックリしていたようだが、温かく迎えてくれた。
すべてを話して両親は怒りを露にしていたが、
「今は何も考えなくていい。ゆっくり休みなさい」と言ってくれて、
話てすっきりしたのか、深い眠りにつくことができた。
朝になり、幸い土曜で休みだった私はまだ抜け殻状態だった。
ピンポーン
と鳴った後、下の階から何やら言い争う声が。
彼だ!!!
彼「●●(私)と話をさせて下さい!お願いします!」
父「帰れと言っているんだ!俺だってお前を信じていたのに、
お前のような最低な奴に娘はやれるか!帰れ!」
しばらく居座っていたようですが、彼はまた来ると言い残し帰っていきました。
その後、実家から会社へ通い(片道2時間)平日隙をみては荷物をとりに帰り、
休日は物件探しに明け暮れ、会社の近くで 一人暮らしをはじめました。
一人暮らしは寂しいものでしたが、仕事を一生懸命してなるべく思い出さないようにしていました。
それから一ヶ月経ったある日のことです。
仕事を終え、駅に行くと彼の姿が!
「しまった!」と思ったときにはすでに遅く、腕を掴まれる。
彼「●●がいなくなって存在の大きさを実感した。
A子とはもう別れた。アドレスも消した。一緒に帰ってくれ!頼む!」
私「しつこい!」もう私には好きな人ができた!」
もちろん嘘でとっさに出た一言だった。
彼は一瞬「ハッ」と驚いて泣き出し、
彼「●●のこと信じてたのに、裏切られた。そんな言葉聞きたくなかった。」
私「人のこと言えないでしょ?あなたに言われる筋合いない!」
彼は「そんな・・・耐えられない。死んでやる!!!」
そう叫び、夜の繁華街へ消えていった。
彼が去っていき、私はしばらく呆然としていた。
追いかけるべきか追いかけないべきか・・・・
電話をかけても応答なしだった。
でもよくよく考えたら、叫んで走っていった数メートル先の交差点で彼はちゃんと信号待ちをしたし、自殺はしないであろうということで、そのまま私は家に帰った。
真夜中彼からメールがあった。
「自殺しようとしたけどできなかった。一生●●(私)の事は愛し続けるから・・・」
楽しかった思い出と、情けなさと、悔しさで今もなお、私は一人暮らしをしているけど、彼はA子と付き合っているのか・・・
彼は今もあのマンションで暮らしているのか・・・
たまに街で彼を探してしまう自分が嫌です。