ちょうどそんな時、玄関がガラッと開いて、60歳位の男性が入ってきた。
三人はそっちに気づくと急に姿勢を正して
「あ、社長。どうもこんばんは」
社長と呼ばれた男性、そちらの三人組に
「おお、君らもここに来るのか」
と話しかけ、俺に気づくと俺にも親しげに話しかけてくる。
三人組「へ?」って顔してる。
「あれ、今まで一緒だったの?」
と三人組と俺とに尋ねる社長に
「いや、そういうわけではないのですが」
となぜかしどろもどろになって答える部長。
社長さん、彼らに俺を紹介してくれた。
「こちらね。たまに話に出る、○○社の○○社長。前社長が亡くなってずいぶんと早く社長になられたけど、若いのによくやってるよ。ついさっきまで異業種の会合でも一緒だったんだ。あ、○○社長。彼らはうちの××部の面々。社長のところに顔を出すのは営業部の者だからあまり面識はないと思うけど」
そう、この社長さんとはさっきまで一緒に飲んでいた仲。
その上、取引先という事でよく面倒見てもらってる。
俺、始めて見たけど酒を飲んだ赤い顔も、びっくりすると急に白くなるのな。
部長さん「あ、は?はへ?ど、ど、どうぞよろしくお願いします」なんて言っちゃって。
なんか、太鼓もちは部長以上にオロオロしてるし。
結局、その社長さんは俺の隣に座って俺と飲みなおしたんだが、
彼ら三人の意気消沈ぶりときたらすごかったね。もうお通夜みたい。
しばらくしないうちにそそくさと帰って行きました。
で、その三人。帰り際に社長さんに挨拶をしていったのだが、
社長さんも知ってか知らずか、
「君らも、もし営業部に移ったら○○社長のお世話になるかも知れんのだから、よく挨拶しておきなさい」
なんて言うものだから、なんか、すごく平身低頭、神妙な感じで挨拶していった。
実際、彼らが営業部に廻されたら面白いのになと、ひそかに思っている。