今年の正月、初めて「幻のイトコ」の実物を見た。
イトコは今50代。
イトコが高校生の頃、学校が凄く荒れていた世代で、今で言う学級崩壊の高校生バージョンのような感じだったらしい。
教室のガラスが割られたり、授業中に教師が殴られたりしていたそうだ。
イトコは不良グループに目をつけられ、殴られたりお金を取られたりで、高校に行けなくなってしまい中退した。
以来、ずっとイトコ家の二階にいる。今で言う引きこもりだけど、当時は何て言ったのか知らない。
私が物心ついた時すでにイトコは引きこもっていたので、名前と存在だけ知っていて、実物を一度も見た事が無かった。
親戚の集まりにも冠婚葬祭にもイトコは一度も顔を出さなかった。
そのイトコが今年、母親である伯母に連れられて、祖母の家に現れた。
伯父(イトコの父)が亡くなり、伯母ももう70代後半、しかも癌が見つかったそうだ。
さいわい健診で発見できて、年齢のせいで進行も遅いし、命に別状は無いらしい。
しかし伯母の入院に際して何ひとつできない、一人で病院に来ることもできず、回覧板当番すら務められない息子に伯母は改めて危機感を覚え(遅い気がするが…)、イトコをせっついて
「せめて外に出て、人に会えるようになろう」と、まずは祖母の家に連れてきたんだそうだ。
初めて会うイトコは、普通の小太りの中年男性だった。
イトコに約35年ぶりに会ううちの両親や叔父叔母は「こんなに変わって」とショックを受けていたが髪は伯母が切ってるそうで、亡くなった伯父さんの服だから流行遅れではあるけど、見た目はまあ普通。
ただずっとうつむいて無言だった。
その後…