俺は自営業と言っても在宅ビジネスのようなもので、家にいる時間が長い。
嫁は外でバリバリやってるので炊事やら洗濯やらの家事なんかは専ら俺の仕事だ。
嫁の下●を洗濯して干すのだけはいつも抵抗があったのだが、まあこれで幸せが成り立っているんだから仕方ないと割り切って頑張ってた。
嫁は嫁で若さに充ち溢れて一生懸命外で仕事してるし、だから俺は自分の仕事をこなしながらも嫁が疲労でバテたりしないように仕事の合間を縫って料理の勉強なんかもしてた。愛する嫁がバランスよく栄養採れるようとか考えたりね。
もともとが若くて美人で優秀な嫁。
俺にはもったいないくらいの自慢の嫁だし、この結婚は俺の執念と挑戦魂、そして1にも2にも努力なくしては成立し得なかった
結婚だったんだろう。努力は並大抵ではなく、時に折れそうになったりもしたが、それでも結婚自体は幸せだった。
少なくとも俺(バカ)は2人の幸せを信じて疑ったことはない。いや、なかった、今日までは。
ある日、俺は家での仕事作業中、休憩がてらにネットを開きこんなサイトを見つけた。
【萌えたコピペ】というサイト
主に2ちゃんで投稿された体験記のまとめサイトみたいなものだけど、ここのサイトの
「修羅場の話」というのが非常に面白かった。他人の不幸は蜜の味という感覚はなかった
けど、まるでネタのようなありえない話と展開がすごく(本当にネタかもしれないけどw)
なぜかハマってしまった。そして俺はその日から休憩をとる度にこのサイトに綴られていたハイテンションな不幸話を1日1話ずつ、ゆっくり読み進めて行った。
そんなある日、突然俺の脳裏にある思惑がよぎった。
「もしかしてウチの嫁もか?」
とにかくこのサイトの不幸話には「女のしたたかさ」「人間の愚かさ」がズラリと並べ揃えられている。
そしてきっかけはいつも偶然だったり、とにかく「ある日突然」
の出来事だ。被害者男性はみんな自分がそんな目に合うとは夢にも思ってなかった、ということも実に共通している。
俺はつくづく馬鹿な発想だと思いつつも、嫁が浮気をしていることを頭の中でシュミレーションし始めた。
もし、浮気していたら・・・。
あのサイトに綴られている不幸話の投稿者たちに感情移入をするように、そして自分たちのケースに当てはめるように考えていった。
これといって嫁に疑わしきところはないけれど、いやまてよ、そういえばここ1年くらいは俺が嫁の携帯を触ろうとするのを嫁は「極端に」嫌がるような・・・。
いやいや気のせいだよ、そんなものはプライバシーだしねえ、誰でも嫌がるよ・・・
なんて思ってみるが、すでにあのサイトの不幸話に脳みそを侵されちゃってる俺は脳内シュミレーションをを続けていった。そして・・・
ちょっとカマかけてみるか・・・?
軽い気持ちで作戦を練り始めた。
あのサイトから「浮気する女」のリアクションやら常套文句やら癖やらを自分なりに読み取って、シナリオを作りだしていった。
(これで何も出てこなかったらまた高価なモンおねだりされてしまうな、まあそれもいっか!嫁にプレゼントをするのは嫌いじゃないし♪)
なんて考えていながらだが、実際は随分入念に下準備したような気がする。
まあ物的証拠とかそんなものはなにもなかったし、追尾して手に入れようとかも考えなかったのだが。
そして、今日「脳内シュミレーション」は決行の日を迎えた。
土曜日だったこともあって、嫁は昼過ぎまで寝ている。
俺は紅茶と軽い朝食を用意して嫁を起こした。
嫁は今日も美しい。寝起きのすっぴん姿がこうまで映える女も滅多にいないだろう。
ひとしきり洗面を終え、用意した紅茶と軽食を啄み、目を覚ました嫁を確認して、俺は作戦を開始した。
俺「ねえ、なんで浮気したの?」(唐突に)
嫁「は?」
俺「俺が知らないと思ってたんだ。30年以上も生きるとねえ、そんなに馬鹿じゃないよ」
(いや、こんないたずらしようと思うほど馬鹿なんだけど)
そしたら…
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本当に、
嫁「・・・・」
俺「!!」(え!?)
しかしまだ慌てない。シュミレーションしたんだからもうちょっとやってみよう。
俺「いや、悪いと思ったんだけど気になることがあって興信所に頼んだんだよ」
嫁「え!?」
俺「写真もあるよ」
嫁「なんの?」
俺「おまえとあの男がホテルに入ったところ、もちろん車の中とかね」
嫁「なに言ってんの?じゃあそれ見せて」
俺も自分がなに言ってんだか、少しどころじゃなく不気味な男だと思ったんだが、
しかし・・・そのときには既にもう、嫁の異変に気付いてしまった。
ああ・・・まったく予想しなかったことになりそうだ。
いや、勘が働いていたのか?それともこうなってほしかったのか?
俺は自分のしたことに後悔し始めていた。たった数行の会話でここまで人生が変わるのか。
明らかに嫁の異変に気づいた俺。
もうここまできたら最後までやってみよう。
俺「写真見せないと話してくれないの?俺はさ、おまえの口から話してほしいんだけど」
嫁「・・・・」
俺「見せるのは簡単だけど、まだコピーしてないから。ここでおまえに破り捨てられたら相手の男から慰謝料請求できないし」
もうここまで言ったら冗談でーす!びょびょびょびょーんとか絶対言えない。
嫁「(溜息)」
俺「俺はおまえにやさしくしてきたつもりだけどな、おまえにとって俺ほどやさしい人間はこの世にいないと思うくらい」
嫁「だからなにもしてないって」
俺「モナみたいに神に誓うか?違うだろ、あれは『ヤリました、酔っ払ってました、バカでした、責任とります、だから当分自粛します』とでもいうところだったんじゃないか?そう言うことで世間は復帰するまでのモナを理解するんじゃないか?」
心の中では、もうなぜこんな話になっているのかと。そしてシュミレーションしつくした
せいかおかげか、ポンポンと口から出てくる言葉が実にキモい。
割愛している部分があるが、実際は実に饒舌に誘導尋問してしまった。
俺「まずはおまえの口から『ごめんなさい』を聞きたいね」
嫁「・・・・」
嫁「・・・・」(折れた音がした)
嫁「ごめんなさい・・」
俺「ブッ・・・・」(マジでげっぷ出た)
なんだろこの展開。本気で目が廻って倒れそうになった。
「さみしかった」「ヒステリックだった」「覚えてない」「今はもう関係ない」
「あなたにも責任がある、あなたが苦しめたから・・・」
こうまで、あのサイトどおりの「常套文句」が出てくるとは思わなかった。
浮気する女の言い訳って本当にこうなんだな。
茫然自失というか、抜殻というか、なにも聞く気がしない。
ただ、怒りとか恨みとかはなかった。
普段の俺と言えば、結構短気なところもあったりして、とにかく人にナメられるのは嫌いだから、もし浮気されたなら、その男はどんな理由でも●してやるくらいの勢いはある。
でも今日の俺はそんな気配が微塵もなかった。
まさか冗談がここまで膨らむなんて。
確かに月イチの行為は少ないかもしれない。
嫁にとっては盛りの頃に俺に半ば無理やり結婚させられたようなものだったのかもしれない。
年齢が7歳離れていても、嫁と稼ぎの変わらない俺がつまらない人間に見えたのかもしれない。
なにが悪かったのかな。
そんなことを考えながら500mmの缶ビールを開けて飲んだ。
嫁は泣きながらシャワーを浴びに行った。
部屋で缶ビールを飲んでいたら、嫁がシャワーから上がってきた。
嫁「話していい?」
俺「・・・」
嫁「あのね・・・離婚しましょう」
俺「うん・・・」
嫁「1週間以内には出て行くから」
そう言うと、すぐさま嫁はなにかを整理し始めた。
タンスやらなにやら開けて出ていくことをアピールしてるのか・・。
俺の頭の中でブチッと音がした。
なんで俺が言われなきゃなんねんだ?はあ?なんでそんな強気なんだ?
もう本当にムカムカが止まらない。俺は嫁にブチまけた。
俺「おまえが『もうしないから許してくれ!』というところだろうが!」
このセリフは間違っている。ウン、俺もすぐに気づいた。
あのサイトでは、「もう絶対許さない男」と「食い下がる女」というのがデフォだった。
しかし常に現実は奇なり。ここでは食い下がろうとする男と開き直った女がいた。
とはいうものの、嫁にしてみても突然のことすぎてワケわからなかったのだろう。
少し冷静に話をしてみれば、嫁もそれに応えていて、まあ話し合いにはなった。
二人とも離婚は避けられないよな・・・という空気の中にいた。
嫁はよっぽどのことをした、と顔面蒼白になっていったが、その反面、これからの自分の生活を心配していたような口ぶりもみせていた。
金の心配は嫁にはなかったと思う。
ただ、なにかの話の中で拍子に
「マンションも探さないと・・・」
なんてことをポツリと言ってた。
女(コイツ)って自分勝手だな!!!と本当に腹が立ったが、俺はどうしてか思うように感情が表にでてこない。ただ嫁の話を聞き流していて、心の中では
「なんでこんなことになったんだ・・・」
てなことばかり考えてた。
が、ちょっと気になったので再びカマかけ聞いてみた。
俺「興信所曰く、数回はキャッチしてると」
嫁「ごめん・・・もうこれ以上・・・」
俺「なんでしたの?」
嫁「だからわからない。でも愛してるのはあなただけです」
キタコレ。例のサイトの常套文句だ。「愛してるのはあなただけ」
嫁「悪いと思ってる・・・」
俺はガイドラインを思い出して言ってやった。
これ以上ないきれいな日本語で滑舌よく言ってやった。
俺「悪 い と お も う な ら 最 初 か ら や る な !」
その直後、自分で言っておいて言葉のトラップにはまったことに気付く。
「や る な」
そうだ、この女したんだ。他の男と。隠れていた感情が遂に出た。
次の瞬間、悔しくて悔しくて、缶ビールを思い切り握りつぶしていた。
そして嫁の方に駆け寄っていって飲みかけのビールを思い切りぶっ掛け流し込んでやった。
嫁は気が狂ったかのように泣き叫んでいた。
なんていう幼稚な行為。恥ずべき自分。
守って守って尽くして尽した5年の終わりがこれか。
今、冗談で疑いを持って、こんなことになってしまった。
確かに嫁のことを今まで●ぬほど愛していた自分がいて、言葉では言い表せられない
くらい大事だった嫁と嫁との結婚生活が壊れていく。いや、もう壊れた。
恥ずかしいというか不思議なんだけど、今日は気絶しそうになることがもう何十回もある。
脂汗がでて、呼吸ができない。震えて頭が痛い。
すみません。
ここまで読んでくださってる方々がいて申し訳ないのですが、続きはまた明日にでも書かせてください。今現在、マジで倒れそうです。