私は以前、痴漢を捕まえたことがある。
営団半蔵門線(当時)の渋谷駅ホームを歩いていると
「痴漢!」という声が聞こえた。
声のした方を振り返ると、巨人の原監督似の男が両腕を掴まれて、列車から引きずり下ろされるところだった。
ああ、痴漢か、と思っていると、男が腕を振り切って逃走。
私は足に自身があるわけではなかったが、その場の雰囲気に飲まれて男を追いかけてしまった。
ホームの端近くまで追いかけたところで、痴漢は思いがけぬ行動に出た。
線路に飛び込んだのだ。しかも
「電車が来ます」のランプが灯っており、ホームの先には、もうヘッドライトの明かりが見えている。
ちょっと待ってくれ、俺のせいでグモ(人身事故)かよ!…