「大変お待たせしてすいません。こちらへど…」
「あーなーたーは かーみーのーけありますか♪」
不意打ちだった。あまりにも不意打ちだった。
満面の笑顔で歌う男の子。
店中に響き渡る歌。
あわてて親が男の子に「こらッやめなさい!」と言うが小さなモンスターは止まらない。
ていうかお母さん、顔が笑ってますよ!
「はげ はげ こんなのやーだ♪」
「かーみのけ きえさってゆく♪」
神よ、貴方は私にどれだけ試練を与えれば気が済むのか
いやちょっとまって、マジでおねがい、やめ、
「はげ ぱげ はげ ぱげ はげ ぱー♪」
「はげ ぱげ はげ ぱげ はげ ぱー♪」
「はげ ぱげ はげ ぱげ はげ ぱー♪」
ここのフレーズが気に入ってるのかエンドレスで歌う男の子
耐えた。私は耐えた。
だがこれまた唐突に
「あーなーたーの かみのーけくれますか♪」
で、もう駄目だった。耐えられなかった。私は負けた。
限界まで止めていた息が「フシュヌヌゥ」という音とともに噴出してしまった。
プルプルしている親父達。顔が真っ赤にしながら小さくなっていた。
別のお客さんたちはネチネチと文句を言う親父達にうんざりしていたらしく、これまた豪快に笑っている。
ダメ押しで男の子「おじちゃん達シーンとしてる!」
君、最高だ。
男の子の親が「うちの子が大変申し訳ないことをしてすいません。よく言って聞かせますので」
と頭を下げていたが髪が薄いことに触れて欲しくないらしく、舌打ちしながらひたすら無視
自分も謝罪したが無反応でほっとした。怒鳴られるかな?と思っていたので。
その後親父達はもう何も文句を言わなくなっていた。
ていうか静かだったw
飲食店なんで文句を言うお客さんはしょっちゅういるけれど、こんなことは初めてで痛快だった。
ありがとう男の子。
胸がすーっとしたので書きました。