母は「荷物も少なそうだし、そんなに選択肢ないんでしょ？
忙しいし、早く決めたいから、玄関で」とあしらう。
その時点で、相手は「あれ？」という感じ。
とりあえず、玄関で交渉スタート。
「今なら、割引価格で反物から浴衣にできます」
「母（つまり祖母）が、浴衣くらい仕立てられます（本当）ので、結構です。
この中だと、これがまあまあ良い色だからこちらを置いて、お引き取り下さい」
「……え、あ、プロが縫製するので、凄く綺麗に仕上がりますよ？」
「他にも浴衣を持ってますが、全て母が仕立ててます。ご心配なく。
なので、こちらを置いて、お引き取り下さい」
「……その浴衣だと、この飾りがお勧めなんです」
「飾りは、家にありますので。なので、そちらが無料だと仰る反物を置いて、お引き取り下さい」
「お嬢さんの意見も聞きましょうよ、もしいらっしゃるなら……」
「娘は未成年です。こんな高価な物を買う選択権はありません」
一事が万事、反物以外は要らないと繰り返す母。
苛立つ営業。
かれこれ、１時間半が経ち、営業は言ってはいけないことを口にした。
「無料で、反物だけを貰おうなんて、虫のいい話はないんです！」
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