その頃になるとインターネットのあらゆる掲示板等に、私達家族を実名で中傷する文章が現れるようになった。
父が外資系で働いていることを念頭に置いてか、家族の名前をローマ字で表記し、つたない英文で中傷するというパターンの書き込みもあった。
元本妻さんが書いているのは明らかだった。
まだジオシティーズ等が全盛期のネット黎明期だったのに、元本妻さんの執念たるや凄まじい……と怖くなった。
目立つものには削除依頼を出したりしたが、面倒なので基本的には放置しておいた。
就職に障るかと思ったが、第一志望の企業に合格することができた。
それから何事も無く働き、夫に出会い、結婚し、子供達が生まれた。
父と母が元本妻さんから奪った平凡な幸せを、私たちは当たり前かのように享受している。
それが怖くて、独身時代に興信所で元本妻さんの現状を調べてもらったことがある。
どうかどうか、幸せでいてくださいと心から願った。
そうでないと彼女の呪詛のパワーが強まりそうで怖かった。
しかし、彼女はどうやら、幸せではなさそうだった。
彼女の娘である、私の腹違いの姉に当たる女性が、すでに自●しているということだった。
彼女がくれた手紙はいまでも取ってある。捨ててはいけないような気がするからだ。
そして自分の子を持ってこそ、彼女の呪詛を本当に恐ろしく感じる。
年に1度は彼女が●しに来る夢を見る。
彼女が私や子供達を生きたまま燃やす恐ろしい夢を。
でも、小5の頃の気持ちも忘れないでいる。元気に前を向いて頑張るしかないという決意。
呪詛に恐怖して、うなだれて、後ろを振り返った瞬間、彼女に後ろ髪を掴まれそうだからだ。
呪われた身であることを忘れずに、私は死ぬまでずっと、どんなときでも、元気でいるしかない。