母は筆舌し難い叫び声を上げ、木刀を手にして叔父に向かっていった。
叔父はそれを容易く受け止め、お腹にパンチを2発、前屈みになったところを顎にアッパーのような肘打ちした。
木刀を奪い、時代劇の介錯のような図になった。木刀を振り下ろす寸前で
「もういいだろ」
と父が叔父を止めた。
叔父は父に絶縁宣言をされ家を出た。自分は叔父について行きたいと言ったけれど、叔父は
「家は君を縛るかもしれないけれど、君を守ってくれるから僕と一緒はダメ」
と言って断った。
その後、自分はまた窮屈な暮らしに戻ったけれど、叔父と過ごした貴重な時間を反芻するだけで心が穏やかになって日々を過ごすことが出来た。
叔父の事はそれ以来、家庭内では禁句と言うのが暗黙の了解になっていた。
けれども、思い切って父や母に叔父について聞くと2人とも叔父の昔話をしてくれた。
父は叔父が羨ましいと良く言う。
母は叔父の事を苦々しい口調で語るけれど、最後はいつも「ほんっとに破天荒な人」と少し嬉しそうに言う。
多分、みんな本当は叔父が好きなんだと思う。
叔父に会いたい。