父親が不倫相手を家に連れてきたときが修羅場。
激務の父が久々に夕飯どきに帰れるってことで部活休んでケーキまで焼いて、父の好きな料理ばかり並べて、馬鹿みたいだった。
連れてきたのは姉と歳が4歳しかかわらない柔らかい雰囲気の綺麗なお姉さん。
父と同じ会社の新入社員で、始終泣きそうな顔してうつむきぎみ。
涙かけらも出てないのに。
子供の私から見ても演技くさいし、何を被害者ぶってんだよと感じたけど、父は彼女を守る正義のナイト気取りでなんか偉そう。
二人とも加害者のくせに。
父と不倫女は離婚前提の話しかしなかったんだけど、母は当時専業主婦。
「俺は激務だから家のことは手伝えない、養うから専業主婦で頼む」
と頼まれて、私達が生まれる前に仕事を辞めたらしく、再就職も厳しいし、しても私達を養えないと思ったのか、離婚をためらっていた。
父は高圧的に離婚の話を、母は
「子供の前でやめてください」
とおろおろ。
沈黙が続いたときに不倫相手が姉へちらっと目線を送ってからケーキを見て、
「可愛らしいケーキですね」
と気遣うような優しい口調で呟いた。
その瞬間姉激怒。
「お前のためにつくったんじゃねーよ!帰れ!」
と叫んだ。
それを聞いて
「なんだその態度は!謝りなさい!」
と激怒する父。
「私は大丈夫だから…ごめんなさい」
と泣きそうな顔で姉に謝る不倫相手。
殺しにかかりそうな姉を全力で止めてたら、冷静になった母が、双方の親を呼び出して日を改めようと話をしめた。
父は私達をひとにらみしたあと、記入ずみの離婚届をバンッとテーブルにおき、不倫相手の肩を優しく抱きしめて車で送っていった。
不倫相手は振り返って姉をちら見したあと頭を軽く下げていた。
あんな挑発の仕方があることに、姉を羽交い締めにしながら衝撃を受けた。
鬼みたいな顔した姉と片付けをしていたら…