すっかり無気力化した兄は
「嫁さんなんかいらん、よそのお嬢さんを不幸にできるか」
とつっぱねるだけ。
母はあせって
「でも老後が、長男チャンのお世話が」
と言い続けるが兄貴の意志は固い。
兄貴はきっぱり
「この家で俺と母さんは朽ち果てるんだよ。他の誰も巻きこまないよう、俺には監視する義務がある。
俺が母さんのそばにいる意味はそれだけだ」
と言ったそうだ。
以上は、実母がこないだ電話してきてわかった内容。
「長男チャンがおかしくなった」
と泣きわめいてたが
「兄貴はこの上ないほどまともだ」
と言ってたたっ切った。
俺はとっくに県外に就職して逃亡済。
嫁も子もいる。
実父とは音信不通。
冷たいようだがあの母からかばってくれなかった空気親父なんかいらんし
嫁にも子にも会わせたくない。
母には存在すら教えたくない。
子どもの頃は正直かわいがられてる兄を恨んだこともあったが、
今となれば兄の選択を遠くから応援するだけだ。