入り口のドアに、あの新聞を切り取って作った文章で
「売春女」や「死ね」等、他にも色んな罵倒の言葉が貼り付けてあり、ポストの中には生ごみが溢れんばかりに突っ込まれていました。
こういうのは、テレビのドラマの中でしか起こりえないと思っていたのに、いきなり自分に向けて突きつけられて、あまりの現実味のなさに、しばらくぼぉっとしながら他人事のように眺めていました。
彼の言葉で我に返り、取り合えず家の中へ入る事にしました。
幸い、部屋の中は無事だったのでひとまず安心していたら、段々恐怖がわき上がってきました。
これから何があるか分からないし、役に立つかもしれないから写真を撮っておこうと言われ、家の前の惨状をデジカメに写して、本題に入りました。
優一「こんな事され続けてたらこの先、段々エスカレートしていって瑞季自身に被害が及ぶかもしれない。」
「そうなる前に、いったい誰の仕業なのか確かめる必要がある。」
「だから俺は、今日からしばらくこっちに泊まって様子を見る」
私「とても恐いけど、これは私の問題でもあるし、いったい誰がこんな事をやっているのか自分の目で確かめたい。」
優一「危ないから瑞季は俺の家にいろ!」
そう言う彼を説得し、その日から私たちは私の家に泊まることになりました。
彼が家にきてからは、嫌がらせもぱったりと止んで、あれは夢か何かだったのかと思い始めていた頃、あの嫌がらせの手紙の件から今まで、毎日私を職場まで迎えに来ていた彼が会社のいざこざで残業になり、どうしても迎えに来られなくなってしまいました。
嫌がらせから今まで私自身に被害が及んだこともなかったし、近頃は音沙汰もなく平和に暮らしてたし、地下鉄を降りて家まで10分くらいだから、今日くらい大丈夫だろうと思って、一人で歩いて帰ることにしました。
今思うと、タクシーでも拾って帰った方が賢明だったなと思います。
地下鉄も出て、家まであと半分くらいと言う所で、前から、深い帽子と眼鏡(サングラス?)を身に着けた見るからに怪しげな女性が歩いてきました。
不審に思って、相手に悟られないようにバッグの中で、いざという時のために「110」を携帯に打ち込み後はかけるだけの状態にしておいて、通話ボタンに指を乗せたままその女性とすれ違いました。
(すれ違ったと言っても道の反対側に居たわけですが。)
何事もなかったので私の思い過ごしか。
と安堵したとたん、後ろからこちらに走ってくるような足音が。
ハッとして振り向こうとした瞬間、髪を引っ張られ、首筋に痛みが走りました。
何をされたのか一瞬の出来事で、理解できないうちに私はその女性を突き飛ばしました。
そうするとその女性が倒れた拍子に帽子が脱げ、顔があらわに。
暗いけど、見間違えるはずはない。
そこに居たのは・・・