うちの子には障害があり他の子と違う、悪気はなかった、弱者に優しく接するのが社会のルールだ、治療費よこせ等まくしたてた。
じいちゃんは怯まず、
「他の子と違うのがわかってるんだら、何で他の子と違う教育しねえんだ。悪気がないなら尚更悪い、他人さまの体や心の痛みがわかんねえってことだかんな。
弱者弱者って言うが、ホンットに弱い人間が自分のこと弱者ですってアッピールできっか?
それから弁護士だか何だか知んねけっど、どこの弁護士事務所だ?
お宅の会社じゃ、電話で『何時頃お邪魔してもよろしいでしょうか』ってアッポイントメントもなしに、相手の都合も考えず他人様の家さ突然うかがうように教育されてんのか?
治療費なら払ってやんぞ?診断書持ってくればな。
その前に、うちのガラス代と、盆栽代、梅五郎の小屋の修理代、払ってくれな。
じぇーんぶお宅の坊主が壊したもんだ。証人ならほれ、隣のシゲゾウさん夫婦がなってくれる話になってるからよ。」
と言って追い返していた。
母親は、
「こんな田舎もう引っ越してやる!」
と捨て台詞を吐いていたが、じいちゃんに、
「あ?それがいいな?」
と言われて肩をいからせて帰っていった。
後で聞いた話によると、男の人は弁護士ではなく、母親の愛人でヒモらしく、近所のじいちゃんばあちゃんの格好の噂のネタになっているとか。
ちなみに「梅五郎」は犬の名前です。
私はそれから5日後、無事に男の子を出産し、しばらく実家にいたんだけど、その間に親子は本当に引っ越していった。
じいちゃんは普段とてもゆったりした動作で、喋るのもゆっくりなのに、男の子を追いかけた時の素早さと、母親に言い返していた時のシャキシャキした喋り方に、とてもびっくりした出来事でした。