俺が見ていた辺りに立っていた人が振り返った。
黒ずくめにサングラス。こっちもこえー。
そいつがゆっくりと移動し始めた。
連れらしい女が「やめなよ」とか言ってたようだが、黒ずくめは移動し続ける。
こっち来た!!俺は慌てて正面上の網棚を凝視。
黒ずくめは俺の隣に立った!!誰か助けてくれ!!絶対次で降りると心に決めた。
座ってるDQNは最初、「あ?」とか言っていたが、すぐに押し黙った。
さり気なく見ると、二人は足引っ込めて股も閉じて下向いてる。
この変貌ぶりの原因はこの人しかいないと思い、隣をちら見してみた。
黒ずくめ、サングラス外してDQNを凝視。
ガン付けてるって感じじゃないんだけど、じっと見つめてる。すげー迫力。
隣にいた俺はもらしそうになった。
少しして黒ずくめが、「ガキ、消えろ」と言い放った。
DQN2頭、次の駅で退散。
黒ずくめは空いた4人分の席には座らず、女の元へ戻っていった。
マトリックスばりのながーいコートを着ている人だった。
俺はありがたく座らせてもらった。
目力だけでそこまでやってのけた黒ずくめを、俺は心のアニキと呼んでいる。