そこに生まれた妹は、父方親戚からはそれこそ宝のように大事にされて育った。
父方祖父母、親戚ははりきって妹にとっておきの着物を着せて送り出した。
近くで観るとしょぼいんだけど遠くから見たり写真に撮るとキレイ。
色は薄いピンクで花とか御所車とかの柄だったと思う。
俺にはようわからんから、見る人が見れば凄いんだろうなーまあ高いしなーとしか思えず
「まあ、いってら」
と送り出した。
「終わったらメールしろ」
と言い、メールの時間帯次第で俺か親父が車で迎えに行くことになっていた。
しかし妹は7時くらいに突然タクシーで帰宅した。
髪も顔もぐっちゃぐちゃ、着物も着崩れてでろでろ、裾ひきずったせいか泥まみれ。
帯もほとんどほどけて、着物の下に着る赤いやつがめくれて丸出し状態で泣いてる。
「なにその着物」
「おばあちゃんみたい」
とpgrされまくったあげく成人式が終わったあとの二次会でさんざんネタにされ、3~4時から飲んですっかりできあがったやつらに
「そんなクッサい着物は脱げ―!」
「脱ーげ!脱ーげ!」
とコールされて、逃げようとしたら捕まえられてもみくちゃにされたらしい。
妹はもともとトロくていじられキャラだったんで、元同級生たちはその延長のつもりでやったんだろう。
しかし孫の晴れの日をめちゃくちゃにされたと祖父母をはじめ父方親戚が激怒 。
着物はクリーニングでも落ちないほどけっこうな損害だったこともあって、持ちうる限りの人脈を使ってしらみつぶしに損害賠償請求をはじめた。