家内の葬儀にはトラック運転手が警察官に伴われて参列しました。彼に
は思い切り罵詈雑言をぶつけ、殴ってやろうと思いました。一生憎むつ
もりでした。しかし、震えながら土下座し私の顔を見ることのできない
彼を見ると、「彼もまたこれから苦しみを背負っていく人間なのだろう」
との思いがよぎりました。
「つまらない人間のために家内を亡くしたと思いたくない。罪は罪とし
て償ってもらうが、その後はきちんと生きて欲しい」。私が彼にかけた言
葉です。正しかったかどうか分かりません。本当の私の本音かどうかも
わかりません。ただ、私には彼を憎むことができませんでした。震える
声で返事をする彼をみると私の気持ちは伝わったようです。
怒りをぶつけられる相手だったらよかったのに。彼そして彼の家族に会わ
なければよかった。