去ること十数年前の、成人式の帰りのこと。
旧くからの友人数名と夕食をどこかで食べて帰ろうということになり、 友人の
「今日から大人なわけだし、記念に今日くらいは少し背伸びしようか」
と、地元では有名なちょっとした高級店でカツ丼を食べることになった。
地元は養豚が有名であり、その豚を使ったカツ丼は絶品であると大人たちの噂により、我々の間ではちょっとした憧れだった。
手回しのいい友人がサッと電話で確認。
予約なしで入れるとのことだったので早速お邪魔した。
注文し、しばし待つと憧れの2000円もするカツ丼が5つ運ばれてきた。
少しわくわくしながら丼のフタを開けると……最初に思ったのは
「あれ?少ないな」
ごはんは、ごく標準的と思われる量 。
しかし上に乗ってるカツの量は、一般的のそれに比べると明らかに少ない。
凡そ半分くらいかな。厚さも横幅も…。
一同も一瞬どよめくも、最終的に
「さすがは高級店!量に頼らず味で勝負か!」
ということで落ち着いた。
実際、味のほうは文才のない俺ではここで表現しきれない絶品だった。
若かったので量的に物足りない気はしなくもなかったが、味的には満足し、気分よくお家に帰れた。
それから十数年後の現在、昨日のこと。
田舎企業故の初任給から1円もかわらない収入で高級料理なんか昨日まで縁も縁もなかった生活だったが、 個人的な祝い事で、社長に例の高級店で奢っていただくことになった。
いろいろとあったのだが、やはりここは思い出もあるカツ丼を再びいただくことに。
当時と変わらないお値段のカツ丼の丼を開けてみると…