姪が事故に遭い、
幸い命はとりとめたが、障害が残った。
悪いことは重なるもので、コトメ夫にも
重い病気が見つかった。
「コトメ夫に万一のことがあったら、
専業主婦の自分はどうやって
姪の世話をしていけばいいのか」と
パニックになったコトメが、
「助けてほしい」と号泣しながら電話してきたので
とりあえず私一人で家に行って、
「一度はっきり言っておこうと思うんだけど
姪の老後を私たちに見させることはしないでね」
「経済的な援助をする義務はないんだからね」と
言った。
コトメは、私たちが快く援助してくれると
思い込んでいたようで、完全に硬直していた。
私が続けて
「姪と言ってもね、私と
姪子ちゃんは、血のつながりがないのよ」
「コトメ夫君の遺産は無駄遣いしないようにね。
私たちに迷惑をかけないように」
と言ったところで、我に返ったコトメが
「人でなし!それでも人間か!屑!」と
ぎゃあぎゃあ泣きわめきだした
すると、それまで青い顔で黙って聞いていた
コトメ夫が、コトメを叱りつけた。
「もうやめろ。嫁子さんが言ったことは、
これまでお前が言ってきたことと
そっくり同じことだ。
お前が言ってきたのは、
つまりこういうことなんだ」
大人しいコトメ夫の、恐らくは初めての
恐ろしい剣幕に、コトメは黙り込んで、
シクシク泣き続けていた。
コトメ夫には、あとで私の暴言を詫び
とにかくコトメにこれまでの言動を
詫びてほしかった、コトメ夫君の回復を
信じているが、もし万一のことがあったら、
コトメの自立を助けること、姪子ちゃんにも
出来る限りのことをする気持ちがあることを伝えた。
ただ自分としては、
コトメ夫の言葉に本当にスカッとしたんだよね。
そしてコトメ夫はあれ以来、それまでヒス嫁の
尻に敷かれる空気夫だったのが嘘のように
コトメをしっかり矯正しているらしい。
タヒを実感して、嫌なことから逃げ続けて
一生を終るのは良くないと気付いたのかもしれない。