トメは、私が絶え間ない陣痛に苦しんでいて、夫と実母が交代で腰をさすってくれている最中に、大福と赤飯を持って
「あらー、お取り込み中だったのねー」
と軽やかに登場し、どっかりとソファに座って
「私がコトメちゃんを生んだときも、促進剤を使ったんだけど、辛いでしょ~。」
「もう二度と子供は生まないって決めて、コトメちゃんで打ち止めにしたのよ~」
「吐くくらい辛くならないと生まれないからね~。まだまだみたいよね。」
と、延々とエンドレスで垂れ流したのです。
さらには徹夜で私に付き添っている実母と夫にねぎらいの言葉もなく
「よくやるわね。病院なんだから、看護婦さんに任せて家に帰ればよかったのに 。付き添いがいたからって早く生まれるもんじゃないんだから。私のときは~」
と言って、実母と夫の神経を逆なでしていました(後で実母と夫が別々に愚痴っていた)。
すると私は、ベッドに伏せて痛みをこらえていたのですが、突然ガバッと起き上がると
「でてけや。あんたが一番、邪魔なんだよ。自分語りしたいなら、よそでやれや。 とっとと出ていかんか!おら!」
と枕やコップやティッシュを投げつけて追い出したそうです。
その後、夫にも
「誰が呼べつった?あ?あたしは見せもんか?珍獣か?生まれるまで呼ぶなつったのに 、言ったこともできんなんて子供のおつかい以下じゃ!あたしの気持ちより体裁が大事なのか!」
と号泣。
おろおろと出て行こうとした夫を
「見捨てるのか!逃げ出すのか!製造責任者だろ!最後まで責任とれ!」
と腕を引いて引き戻した。
・・・そうです。
夫の腕を引いたつもりでしたが、正確には服を引っ張っていて、シャツの袖がちぎれたそうです。
そして、夫がトメに連絡したのではなく、自宅と実家に電話をしてどちらも留守だったので 、察したトメが突撃してきたということでした。
トメが出て行った後、子宮口も全開し15分足らずで出産。
極期に自分が言ったことを覚えていなかった私がにこやかに
「かわいいわー、お義母さんにも見せてあげなきゃ。夫くん、お義母さん、呼んであげて。」
と言った時、夫はガクブルだったそうです。
確かにそうなるでしょうね。
トメの発言はよーく聞こえていたので、心の中で悪態をついていたんですけど、いつの間にかそれが外に出ていたようです。
自分では心の中で思っていただけだったんですけど。
後から実母に言われて、あちゃーと思いましたが、トメは適当な距離をとってくれるようになりました。
時には女神発言も大切かもしれません。
偽女神でもいいのかも。