どこでもドアが欲しかった

クソ兄が婚約者を連れてきた → 母の手料理を見て、婚約者「こんなの食べられません。出前を取ってもいいですか?」俺「……」

time 2018/12/25

クソ兄が婚約者を連れてきた → 母の手料理を見て、婚約者「こんなの食べられません。出前を取ってもいいですか?」俺「……」

俺と姉ポカーン(゚Д゚)
母は恥ずかしそうに笑いながら

『…そうよね。ごめんね』

って。
しかも婚約者の言葉を止める所か、そうだそうだ、ピザが良い…キレやすい家系なのかな。
最初に姉がキレたけど、せっかくカウンセリングにまで通ったんだから止めろと止めた。
その代わりに俺がブチ切れた。
ごめん、母さん。って一言かけて、兄貴とその婚約者に向かってテーブルを思いっきりひっくり返してやったよ。
そのまま床に落ちた母の手料理を鷲掴みにして無理矢理2人の口に突っ込んだ。

『マズいか!?本当にマズいのか!?子供の為に作った料理が!!本当にマズいのか!?』

泣きながら叫んでた。
兄貴からは勿論手が飛んできたよ。
思いっきり頬を何度も殴られた。
だけど俺は何度も落ちた料理を拾っては2人の口に突っ込み続けた。
口の中の鉄の味を今でも覚えている。
兄貴には左手を噛まれて後に左手に障害が残るわけなんだけど。
だけどやがて婚約者の方からは泣きながら

『ごめんなさい…ごめんなさい…美味しいです…美味しいです…!』

と自ら床に散らばった残骸を掻き集めながら食べ始めた。
ここまでの状況な。

甥っ子達→お婆ちゃん(母)を抱き締めながら泣く
姉→俺を抱き締めながら泣く
俺→噛まれた左手と殴られた口から血を流しながら泣く
婚約者→謝りながら手掴みで料理を食べながら泣く

まさにカオスだよな。
泣いてる俺も情けないけど、今回ばかりは身を引くのは嫌だった。

『てめぇはどうすんだよ!?』

確か兄貴にこう叫んだと思う。
兄貴はブチ切れながら

『てめぇらとは縁を切る!孫も見せねぇ!』

そう叫んでテーブルをぶっ壊して婚約者の手を引いて家を出てった。
婚約者は最後まで謝り続けていた。
それからは兄貴とは完全に縁を切った。
だけど暫くして知らない番号から母の携帯に電話が。
兄貴と結婚して嫁になったあの婚約者からだった。
兄貴の携帯を盗み見て、自分の携帯から母に電話してきたらしい。
母は暫くその嫁と話していた。
電話が終わった頃、母に話し掛けたら母が泣いていて、また何か言われたのかと俺はキレそうになった。
でも母は違うという。
母曰く

嫁にあの日の事を謝られた事。
嫁も昔虐待にあっていて、母のに限らず誰かの手料理全般が食べられなかった事。
でもあの日の母の手料理は暖かくてとても美味しかった事。
だからレシピを教えて欲しいと言われた事。
私もお義母さんのような母親になりたいと言われた事。

母は泣いて喜んでいた。
その時にはもう俺の左手はうまく動かなくなっていたけど、母の涙、ちゃんと拭えていたかな。
そんな母も去年亡くなった。
数年前から内蔵系の病気で入退院を繰り返していたから、そろそろなのかなって思ってはいたけど、64歳。
早すぎだろ。
でも母親って本当に凄いのな。
亡くなる数日前に

『私が死んだら〇〇(兄貴)に知らせて欲しい』
『そして葬式に〇〇が来たら、嫁には御線香を上げさせてほしい』
『〇〇は私の子供。でも〇〇に御線香を上げさせるかどうかは2人(俺と姉)が決めていい』

それが母の遺言だった。
母が亡くなり、俺は遺言通りに兄貴に連絡を入れた。
嫁と葬式に顔を出すとの事だった。
だけど俺と姉の意思は決まっていた。

葬式の日、親戚やら母の友人、俺や姉貴の友達の親まで来てくれた。
改めて母の人望の厚さを知った。
3LDKの家(団地)は、母を死を嘆く人で一杯になっていた。
そんな中、兄貴と嫁がやって来た。
兄貴は欠伸をしながら、嫁の方は玄関で深々と頭を下げていた。
姉はそんな嫁に頭を上げるように促し、家の中へ、母の棺の前へと促した。
俺はその逆。
家に当たり前のように上がろうとする兄貴を思いっ切り突き飛ばした。
はい、兄貴キレますよね。

『仕事を休んでまで来てやったのにその態度はなんだゴラァ!!』

俺、生まれて初めて人を殴りました。
感覚の無い左手で。
後ろ向きに倒れた兄貴に馬乗りになって、何度も何度も左手で。
左手は感覚が鈍ってる分殴ってて痛いとか無いし、その頃には俺も恰幅が良くなってて兄貴に負ける気がしなかったし。
だから止められるまで殴り続けたよ。

その日、初めて兄貴の涙を見た。
その日、初めて兄貴の土下座を見た。
その日、初めて過去から解放された気がした。

『お前が家に上がるのは母さんが許しても俺が許さん。大体お前の方から縁を切ったんだろうが!いつまでも家族面してんじゃねぇ!』

兄貴は口から大量の血を流しながら、俺と姉、そして周りの人達に深々と頭を下げた。
結局兄貴から謝罪の言葉は最後まで無かったが、心が晴れやかな気持ちになれたのは久しぶりだった。
嫁は案の定居づらそうにしていたが、母の友人達から

『貴女の話は聞いている』
『良いお嫁さんだって褒めていた』
『△△(母)さんも貴女に見送って貰えたらきっと喜ぶ』

その言葉を聞いて、母が嫁の事を自分の娘のように可愛がっていた事を知った。
母の最後の遺言、叶えてあげられたかな。
母の葬式から数ヶ月、兄を全力で殴ったせいで左手の中指と薬指の付け根の骨折が治り始めた頃、兄と嫁は離婚した。
そんな嫁は今は実家で俺ら家族と一緒に暮らしている。
毎日台所に姉貴と本当の姉妹のように立ってるんだ。

母の仏壇にも毎日手を合わせて、お腹の子供の話をしてる。
誰の子供だと思う?
俺の子供なんだぜ?
兄貴の元嫁は、今度は俺の嫁になる予定。
高校1年生になった長男、中学2年生になった次男。
2人の甥っ子達、そして姉も子供の誕生を楽しみにしてくれている。
お腹の子供は、幸せな家庭の中で立派に育てる。
その為に今俺もカウンセリングに通ってる途中。
DVって遺伝するっていうから。
俺は生まれてくる子供を、俺達みたいな虐待サバイバーにしたくないから。
カウンセラーの先生からは、良くなってきている。後数回のカウンセリングで済むと思う。という御言葉を貰った。
先生から大丈夫というお墨付きを貰ったら、籍を入れる予定。
ちなみに高卒認定にも受かり、俺もちょっと遅めの某企業のサラリーマンです。
人伝に聞いた話だと、兄貴は県外で酔っ払って暴力振るって刑務所に入れられたとか。
本当かは分からないけどさ。
兄貴を初めて殴り倒したあの日、俺は十数年分の復讐が出来たと思ってるけど。
だけど、嫁と子供と、姉と甥っ子達と、笑顔の絶えない幸せな家庭を築いていくのが更なる復讐で、亡くなった母への遅い親孝行だと思ってる。

長々とスッキリしない話をすまん。
だけど決意の意味も込めて初書き込み。
俺、精一杯生きていきます。

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引用:素敵な鬼女様
画像出典:GATAG

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