どこでもドアが欲しかった

クソ兄が婚約者を連れてきた → 母の手料理を見て、婚約者「こんなの食べられません。出前を取ってもいいですか?」俺「……」

time 2018/12/25

クソ兄が婚約者を連れてきた → 母の手料理を見て、婚約者「こんなの食べられません。出前を取ってもいいですか?」俺「……」

俺は3人兄弟の末っ子(兄、姉、俺)で、母は足に障害を持ちながらも俺達3名を女手一つで育ててくれた凄い人なんだ。
正直父親の記憶は殴られた記憶しか無い。

それは兄も姉も同様で、離婚した後は見事に兄が親父のDVの血を引き継ぎやがった。
姉は毎回俺を庇ってくれて傷だらけ。
さらに兄は母親にも手をあげる始末。
ヘルメット、バット、掃除機、一通りの物では殴られたかな。
姉は上と下の前歯、計6本折れて病院送り。
徐々に優しかった母と姉もおかしくなっていった。
母は兄を怖がり3日や4日家を空けるようになり、姉は彼氏の家に入り浸るようになった。
残された俺中学1年生。
兄とは8つ離れているので当時兄は21歳位、姉は1個下の20歳。
兄はキャッチの仕事で月40万稼いでいたらしいが、家には全くお金を入れずにブランド品買い漁る。
姉はやがて県外に出稼ぎに行くようになった。
そうなれば標的は完全に俺。
今になるまで良く生きていられたなって本当に思う。
虐待サバイバーっていうらしいな。
まぁ、今はそれはいいけど。
母は姉が家を出てからは帰ってくるようになり、今度は俺が母を庇う側になった。
やり返せよって思うだろ?
当時やせ形で身長が175cmの俺と、恰幅が良くて身長が190cmの兄貴。
どっちが勝つと思う?
正直寝てる間に殺してやろうと包丁を持って枕元に立った事もあったよ。
でも不思議だよな。
殺す怖さより、殺し損ねた時の怖さの方が優って出来なかったんだ。
結局兄貴のせいで中学もろくに通えず、行ける高校無くて16からバイト三昧。
40万稼ぐクセに飯だけはバカみたいに食うから、母の稼ぎと俺のバイト代だけじゃ足りなくて、バイトは何個も掛け持ちして何とか家計を支えてた。
そんな兄貴が県外へ出稼ぎに。
やっと解放される、そう思ったのは最初の数年間だけ。
神様の意地悪は終わらなかった。
県外で結婚して2人の子持ちになっていた姉が甥っ子を2人連れて実家に帰ってきたんだ。
理由の一つは母の足の障害が限界で働けなくなり、杖になった事。
二つ目はそんな母に俺はバイトで付きっきりでの世話をしてやれない事。
昔から母親思いだった姉はだったら私が…と、夫を説得して帰ってきてくれたらしい。
正直姉貴は凄かった。
母の面倒見て、子供の面倒も見て、俺の事まで気に掛けてくれて。
料理も抜群に美味いし、家も常に綺麗。
母も孫に懐かれて幸せそうだった。
実際俺も幸せだった。
しかし数年後、夫の不倫が原因で離婚。
その時、姉の中の何が壊れた。

当時一番上の甥っ子は4歳、次男は2歳。
4歳の甥っ子が何か粗相をやらかしたらしい。
姉は鬼の形相で長男を叩いていた。
勿論長男大泣き、姉貴の手のひらは真っ赤。
だけど止められなかった。
昔の兄貴と姉貴が被って見えて、動きたくても動けなかったんだ。
それから姉の子供達への躾と称した虐待が始まった。
甥っ子が何かやらかす→暴力→甥っ子大泣き→姉も後悔で大泣き
これの繰り返し。
やがて甥っ子達は俺がちゃんとお片付け出来て偉いね、と頭を撫でようとしただけでも怯えた表情を見せるようになった。
そして遂に、甥っ子達は泣かなくなった。
というよりも、感情が無くなってしまったように見えた。

『もう、限界』
『これ以上この子達を傷付けたくない』
『私は母親失格』

元々やせ形だった姉は、毎日吐いてばかりで骨と皮だけになっていた。
バイトバイトで知ってて見て見ぬふりをしてきた俺のせいだと思った。
だから提案をした。

『可哀想だけど少しだけ施設に入れよう。姉貴はその間にカウンセリングに通って、立派な母親になろう』

これしか無いと思った。
審査の結果、当時の姉には子供達を育てる力が無いという事で甥っ子達は施設へ。
姉は約束通り定期的にカウンセリングを受け、母は私にも責任があるとデイケアやリハビリで良い方の足の筋肉をつけるトレーニングをして、家の中や近場への買い物程度なら杖を使わなくても歩けるまでに回復した。
俺は相変わらずバイト三昧。
朝昼晩で働いても正直中卒の俺には稼げる額なんてしれたもので、母の病院代、姉の病院代、そして家賃や光熱費や食費や3人分の携帯代。
流石に高卒の資格を取るために貯めていた貯金を少しずつ切り崩しても限界があって。
家賃も滞納するようになり、光熱費も払えなくなっていった。
だから最終手段、と携帯を止められる前に兄貴に連絡を取った。
その頃兄貴は某有名企業の正社員になっていて、年収800万稼げる迄になっていた。
兄貴に事情を説明して、必ず返すから金を貸してくれないか、藁にも縋る思いだった。

だけど兄貴は一言

『は?俺お前らに特に借りとかねぇし。なんで貸さないといけないわけ?』

俺、プッチーンね。

『ふざけんな!お前が実家に居た間、お前家に1円でもお金入れたか!?入れてねぇよな!?誰の金で飯食ってたんだ!?俺の金だよな!?』

多分もっと色々言ったと思うけど、熱くなりすぎて忘れた。
兄貴からは

『てめぇ!誰に向かってそんな口を聞いてんだ!?』

ってキレられたけど

『お前だよ!クソ野郎!』

って言い返したら切られた。
冷静になった後にやってしまったって思ったけど、丁度姉の元旦那(再婚済み)から電話が掛かってきて、子供達の様子や姉貴の様子を聞かれたからありのままに話した。
元旦那、根はいい人で

『原因は俺。月にいくらあれば生活出来る?言われた分振り込ませてくれ』

甘えて最初の月は滞納している家賃含めて15万。
次の月からは8万〜10万を振り込んで貰うことにした。
お陰で生活は多少楽になり、姉も回復、カウンセラーからもう大丈夫というお墨付きを貰った。
甥っ子達を一緒に迎えに行った時、姉貴が震えていた事、甥っ子達が泣きながら姉貴に駆け寄り、姉貴も泣きながら抱き締めて子供達に謝り続けていた事、俺は一生忘れないと思う。
姉貴は昔のような穏やかで優しい姉貴に戻ってた。
朝起きた時、夜眠る時、必ず子供達を抱き締める。
叱る時も手を上げずに子供達を座らせて何が悪かったのかを言い聞かせる。
甥っ子達は立派に育ったよ。
小学生高学年になった頃には、スポーツも出来て勉強は…少し苦手だったみたいだけど、友達も沢山出来た。
これが本当の幸せなんだって思っていたら、兄貴が実家に婚約者を連れて帰ってきた。

母はやっぱり自分の子だからと、嬉しそうにその婚約者に一生懸命手料理を振る舞った。
母は決して料理が得意な訳じゃない。
兄貴を嫌っている姉は嫌々ではあったが、手伝うよ、と声を掛けたらしいが、お母さん一人で作りたいのって嬉しそうに言われたらしい。
だから俺と姉は料理だけを運ぶ事にした。
不格好な料理がテーブルに並ぶ。

『さぁ遠慮しないで食べて』

満面の笑みのお母さんを見て、お母さんがいいんなら…その時はそう思っていた。
婚約者の言葉を聞くまでは。

『これ…手料理??』
『こんなの食べられません。出前取ってもいいですか?』

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引用:素敵な鬼女様
画像出典:GATAG

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