10年ぐらい前、出張と有休と帰省を兼ねて、2ヶ月ほど冬の北海道に滞在したことがある。
夜の雪道をゆ~っくり走っていたら、路外に斜め45度に傾いて一台の車が止まっていた。
近寄ってみたら車内に婆さんが一人取り残されていた。
「お父ちゃん(爺さん)は歩いて街まで助けを呼びに行ったの。いつ戻ってくるかしら…」
と今にも泣きそうだった。
何より斜めになった車内でベルトに体が圧迫されて苦しそうだったので、まず婆さんを救出して、俺の車に乗せてやった。
10分ぐらい待ってたら爺さんがトラクターに乗せられてやってきた。
トラクターの若い兄ちゃんが持ってきたロープだけでは短いが、俺のロープをフックで繋ぎ足してなんとか路外の車まで到達した。
トラクターはジワっと前進するんだけど、爺さんは一刻も早く脱出したいのか、アクセル全開。
このまんまだと車は斜面を登ることなく、ただ横にズルズル引っ張られるだけ。
そこで俺が運転を代わり、トラクターの進むペースに合わせてアクセルをゆ~っくり吹かしてジワジワと脱出。
ロープを外して路上で爺さんは俺とトラクターの兄ちゃんに何やら謝礼を渡しそうな雰囲気だったので、俺は
「いいよいいよ、帰り道気をつけてね」
と言って爺さんと別れ、俺の車から婆さんが降りた。
婆さんは涙浮かべながら
「ありがとうございました、ありがとうございました、、、」
と何度も頭を下げてお別れした。
これで颯爽と消え去ればカッコ良かったのだが…