どこでもドアが欲しかった

失踪した母が1年後現れたが、近づく私を母は「邪魔」とひと言…

time 2016/11/17

失踪した母が1年後現れたが、近づく私を母は「邪魔」とひと言…

わたしが3歳、弟が1歳のときに、母親が失踪しました。
夕方に出張から父が帰ると、冷蔵庫と藤製の電話台以外の家財道具が一切なくなっており、ぐったりしたわたしと、同じくぐったりした歩行機に乗せられた弟がいたそうです。
何故母がいなくなったのか。
事情がわからない父は一人で育てるのが無理だったので(船で遠出をする仕事)、わたしと弟を新幹線で2時間ほどの距離の父方祖父母に預けました。
これが第一の修羅場です。(主に父が、ですが)

時は流れて1年後。
わたしは父方祖父母宅(以降自宅)近くの幼稚園に通っていました。
幼稚園バスが迎えに来る場所は、自宅から400mほど真っ直ぐ進んだところで、大きな道路に面した場所でした。
その道を、わたしと祖母と、祖母に抱かれた弟と歩くのが日課でした。
ある朝いつも通りにバスが来るところへ向かっていると、私たちの目の前に、大きなワゴン車が停まりました。


ワゴン車の助手席からは、母が降りてきました。
1年ぶりに見る母の姿。
運転席からは見たことのない男性が降りてきましたが、気にはなりませんでした。
嬉しくて、わたしは母に駆け寄りました。
母もこちらに歩いてきます。
「ママー!」
“きっと抱き締めてくれる”。
わたしはそう期待していたと思います。
しかし、母からの返答は違いました。
「邪魔」

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