一年くらい前のこと。
大学から帰ってバイトも無かったから一人暮らしのマンションでいつも通りくつろいでたら、夜の11時くらいにチャイムが鳴った。
誰だろと思って覗き穴から見てみると見知らぬおっさんが。
「どちら様ですか?」
「○○(苗字)です」
知らん。
「あの……どちら様でしょうか?」
「○○です。○○A子の父親です」
一瞬、だから○○A子って誰だよって思ったんだけどすぐに思い出した。
中学時代付き合ってた元カノで、別々の高校になってからは自然消滅した感じで別れた女の子の名前だった。
「あの、ご用件は?」
「少し娘のことでお聞きしたいことがあります」
こんな夜遅くになんだよ、とは思ったものの相手の態度も冷静だったし、なんかあったのかと思って、とりあえず扉越しに話すのも失礼かと思ってカギ外して扉開けたのが間違いだった。
玄関開けるなり俺の顔面に衝撃。尻もちついた。目の前がチカチカして何が起こったかわからんかった。
鼻っ面おさえて涙目で見上げると、A子の親父さんが鬼みたいに顔真っ赤にして
「テメエか娘を傷物にしやがって!!ぶっ頃してやる!!」(原文
なんのこっちゃと思うよりも先に親父さんが殴りかかってきてマウントみたいな態勢で何回か殴られた。
気が付くと俺は親父さんの腹に蹴り入れて部屋の奥に逃げてた。頭の中は完全に???だったけど体が勝手に動いた感じ。
どっか痛いとこに入ったらしく親父さんがお腹抱えて蹲ってて、なんでか知らんが
「だ、大丈夫ですか?」
とか間抜けた台詞で声掛けてたら、親父さんが背中のほうのベルトからなんか取り出した。
それが包丁だって気付いた時、俺は完全にパニックになって、狭いマンションの部屋の中でしばらくテーブル挟んでガバディみたいな動きで逃げ回ってた。
何回か喚きながら包丁突き出された覚えがあるんだけど、あれは我ながらよく避けれたなと思う。
最終的には部屋の隅に置いてあった中学時代に京都のお土産で買った木刀で親父さんの腕を何回か叩いて包丁を取り上げた後、手首抑えて呻いてる親父さんをすり抜けて玄関から出て、騒ぎを聞きつけて表に出てたお隣の旦那さんに通報してもらった。
警察が来て親父さんが連れて行かれて、散々な有様になった部屋の写真取られたり、この包丁(親父さんが持ってきたやつ)は誰のものですかとか、事情を色々聞かれた。
玄関前で俺はタオルで鼻血抑えながら
「いえ全く心当たりが……」
「何がなんだか……」
とかしか答えられなかったんだが、もう他の部屋から野次馬は来るわ大家さんには何故か俺が何かしたのかと疑われるわでホント散々だった。
俺の証言を記録してる警官の横で、無線で誰かと連絡とってるもう一人の警官が
「えー、凶器は木刀の模様」
とか言ってて
「えっ!?」
ってなった時が一番ヒヤリとした。
俺が主犯的な扱いをされてんのかと。
ともかく詳しい話は署のほうで聞くからとか言われて、正直俺は病院に連れてって欲しかったんだけどそのままパトカーで連行されてった。
取調室?で事の顛末を何回も何回も聞かれたんだけど当然答えられるわけもなく、そのうち話は
「あの木刀はどこで手に入れたんだ」とか
「怪我をさせるつもりだったのか?」
とか話が変な方向に向いていった。
とにかく俺は被害者ですって訴えてると、そのうちA子の母親とA子本人が来たとかで、俺と話がしたいとのことで話し合いの場所は通路に。
俺が先に通路に出て待ってると、すぐにA母とA子がきた。
俺の姿を見るなりA母土下座。A子は泣きながら「ごめんね、俺君ごめんね」と謝られて何度目ともつかないなんのこっちゃ状態だった。
そっから聞いた話をまとめると…