今まで色々な何かを食べてきたけど、以前出されたエビフライが最強だった。
極端な節約で料理では無くゴミを作る事にかけては天才的な嫁。
極度の偏食で自分のおままごとで作り出したゴミは食べない。
そのエビフライは普通のエビフライだったのに、嫁の手で炭のような物に変貌した。
油。テレビで継ぎ足しだけで使ってきたなんかのタレに影響されて油も出来ない訳が無いと一人合点して使い続けているそれは、真っ黒な下水状を呈している。
揚げ物するとすさまじい煙が立ち上り、家はおろか近所中悪臭が漂う。
一口で限界。
胃がむかむかしてくる。
タルタルにどぶ漬けして2本だけ食べた。
あまりの仕打ちに軽くキレた俺はコマメに連絡をくれる嫁の両親にそれを食らわせてやると決意した。
ある日両親は来た。
俺はエビフライにしてくれと嫁に頼んだ。
嫁は「嫌いなんじゃないの?」と不審顔。
ここで嫁両親にお願いしておいた事がある。
「なにがあっても料理が完成して口に運ぶまでは何も言わないでください」と。
煙がモウモウと上がるキッチンを見て早くも異様な雰囲気。
嫁母がなにかを言いたそうにしているが、俺は目で制した。
リビングにこもる悪臭。
嫁父溜まらず窓を開けだす。
それでも耐え切れず外へタバコを吸いに行った。
やがて悪臭を撒き散らしてエビフライだった何かが登場。
一同緊張がピークに達した。
「いただきます。」
悪臭を放つゴミに箸をつけて口に運び少し齧ると嫁父がつぶやいた。
「なんだ?これは?嫁子?」
とその一言から始まった罵倒と説教は1時間に及んだ。
しかしゴミを食卓へ何の躊躇も無く出す事ができる嫁も黙ってはいない。
どうしてそんな極端な節約をしなければならないかの原因を、俺の収入にあるとしれっと言ってのけた。
嫁母はいきなり張り手を嫁に食らわした。
ドスの効いた声で
「アンタ半人前の癖に一人前の事言ってんじゃないよ。文句があるならコレ全部平らげてから言いな!」
嫁の泣き叫ぶ声と嫁両親の修羅場は深夜まで及んだ。
最後に嫁両親は土下座して俺にあやまり
「この際、娘を徹底的に再教育させていただきます。申し訳ありませんが暫く実家で預からせていただきます」
と暴れる嫁をひっつかんで強引に実家へ帰っていった。
それから3ヶ月。
様々な事やりとりが嫁実家と俺の間にあったが、結局離婚する事になってしまった。
しかし…