どこでもドアが欲しかった

義実家は絵にかいたような上流階級で、貧しい家で育った私はあまり馴染めなかった→ある日…

time 2016/11/28

義実家は絵にかいたような上流階級で、貧しい家で育った私はあまり馴染めなかった→ある日…

義実家は絵にかいたような上流家庭で、割と貧しい家で育った私は、その空気にあまり馴染めなかった。
うまく溶け込もうとはしていたのだけど、住む世界が違うという感じで、どうも話がかみ合わない。

義両親ももったいないくらい優しい方々で、馴染めない私にとても気をつかってくださったのだけど、そうすると余計に疎外感を感じてしまって、うまくいかなかった。

私自身がそうなのだから、私の実両親はもちろん義両親とうまく付き合えず、実家と義実家はほとんど交流がなかった。

これでは悲しいということで、今から十年前のお正月、義両親、夫、私、九歳、六歳の私の息子が集まった義両親家に、私の実弟が挨拶に来ることになった。

義両親も歓迎してくださって、初めの挨拶はとても和やかに終わった。
でもその後が続かない。
話せば話すほど変な違和感ばっかりふくらむ感じで、弟は途中からほとんど無言で相づちを打つだけになってしまった。

しばらくして弟がこそこそ席を立った。
私の息子たちが遊んでいる隣室に入っていった。
なんだったのか、後から聞くと、手洗いに行きたくなったけど、場所がわからず、しかし義両親には聞きづらいので、息子たちに聞きに行ったということらしかった。

戻ってきた弟に、息子二人がついて来た。
なんだか場の空気がほっとした感じになって、義母が嬉しそうに二人を構いはじめた。
それで、下の子は楽しそうに料理をほおばったりし始めたのだけど、上の子はじっと弟を見つめて、
「おじちゃん(私の弟)、楽しくないん?」
と、言った。

「そんなことない。楽しいよ」弟が言った。
「でもおじちゃん、楽しくなさそうやん」
「そんなことないよ」
「ある。全然笑ってないやん」
「そうかな。なんでやろ。初めての場所やから緊張してるんかな」

凍りついたような空気の中、息子は、今度は夫と義両親に言った。
「おじちゃん、トイレの場所を僕に聞きに来たんやけど」
「……」
「なんで教えてあげへんかったん」

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