その日の夜、世間は忘年会シーズンということもあって、決して大きいとは言えない店(当方居酒屋勤務)は混み合っていた。
しかし、お客さんのほとんどが普段から来てくれている近くの会社のOLさんばかりで、彼女らとは顔見知りだったので、接客する方としては気が楽だった。
彼女たちが来店してから三十分後、ワイワイと彼女たちがイイ感じに盛り上がっていると、見るからに酔っ払った親父がご来店なさった。
どうやらここに来る前に何軒かハシゴしていたらしく、べろんべろんに出来上がっていた。
店に入ってくるなり、突然
「俺は神だ!早く酒を持ってこい!」
などと喚き散らす始末。
とりあえず、適当に飲ませて退場してもらおうと思っていたのだが、来店から一時間後、まだ親父に帰る気配ナシ。
しかも
「私は医者なんだがね?エリートなんだよ?ところで君は人生このままで良いと思ってるの?」
と俺に絡み始める。
思わず片手に持っていた地酒のボトルで親父の頭を強打してやりたい衝動に駆られるが、プロ根性でぐっと我慢。
適当に
「そうなんですか~へぇ~へぇ~」
とトリビアボタンのようにあしらっていたら、親父はますます調子にのりだして、勝手に店内にあるカラオケを歌い始めた(本当はこっちの許可がいる)。
周りのお客さんもかなりイライラしていたようだったが、親父はまったく気にしていないようで、止せばいいものをもののけ姫を歌っていた。
しかもすんげぇ下手。
いい加減俺もキレそうだったので…