我が家は両親と年子の姉と4人暮らしだった。
両親とも安定した仕事をしていて習い事もたくさんさせてもらって、
とても幸せな子供時代だったと思う。
しかし私たちが中学生の頃、母があまり家に帰ってこなくなった。
快活だった父がだんだん無口になりやせていって、姉が父のことを心配しながら家事をやり始めた。
母がほぼ自宅に寄り付かなくなったころ、母が浮気していたことを知った。
父はまだ母に未練があったのだろう。母に離婚してほしいといわれても承諾しなかった。
私たちの前では努めて明るく、なんでもないように振る舞った。
父と私たち姉妹で家事を分担しながら母が帰ってくるのを待とうと、全員が半ば自分に言い聞かせるように生活していた。
母から私たちには連絡は来なかった。
しかしある夜、父は遅くまで帰ってこなかった。
夕方、暗く沈んだ声で今日は遅くなると電話をかけてきた。
姉と二人で眠れずに父の帰りを持っていたら、父が疲労困憊した様子で帰ってきた。
なぜかお線香のにおいがしていた。
父は私たちの顔を見ると、顔を覆って泣き始めた。
私ははじめてそのとき、父が泣いた顔を見た。
父は泣きながらとぎれとぎれに、もう母と離婚すると私たちに告げた。
正直、私も姉もそれは覚悟を決めていた。
しかし、感情の堰が切れた父が語った内容がすさまじかった。
その内容とは…