友達と飲んでたら、隣の座敷がなんか険悪な雰囲気になった。
どうも、引きこもりになった奴を、友人が無理やり連れ出し説教してるようだ。
多少きつい言い方しないと相手の心には届かないんだろうが、駄々漏れになった説教を聞かされる他人の身にもなってほしい。
トイレのついでに20代前半と思われるその連中をチラリと見てみると、叩かれて俯いてる奴は顔やら腕やらが酷い湿疹になっていた。
彼はそれが原因で就職決まらず外出も苦痛で引きこもりになった模様。
イヤでも聞こえてくる連中の問答を要約すると、アトピー経験者らしい男が治療法(皮膚にダメージ与えたりアレルゲンを大量摂取する
荒療治というかそんなんで治るわけない)を指南し、湿疹男(そいつもアトピーらしい)が、 それらを試したが効果ないと答えると、
「苦痛を堪えきれず中断するからいつまでたっても治らないんだ、甘えるな」
と経験者が更なる説教。
就職も、湿疹男が
「こんな姿じゃ印象悪すぎるし仕事にも影響出る」
(指紋がなくなってるのかコップを落としていた)と言えば、
「面接のときだけステロイドでごまかしてでも潜り込め、そのうち抵抗力できて治る」
と経験者が更に叩く。
湿疹男は、先方に迷惑はかけられないと反論。
申し訳ないが湿疹男の言うとおりである。俺が人事なら落とす。
客への印象も悪すぎるし、そんな状態で任せられる仕事なんて思いつかん。
だが経験者は更に説教。
「周りの迷惑なんて考えず堂々としてろ、迷惑だって考える奴なんかいねーから。とにかく外に出ろ、そうしないと気が滅入る一方」
アンタと話してりゃ誰だって気が滅入るだろうよ。
周りの迷惑考えてしまう状態じゃ外出そのものがストレスだろうに。
というかネチネチ説教たれるアンタが迷惑だ。
イライラしてきた俺達は、酒の勢いである計画を実行。
飲んでた友達にトイレに行かせ、戻ってくるとき隣の座敷覗かせ、こう言わせる。
「うわ、汚ね」
戻ってきてから、
「もう出ようぜ、あの人にゃ悪いが食欲うせた。気分悪くなったよ」
そして俺は
「そうだよなー、周りの迷惑考えて引きこもっててほしいぜ全く。
本人だって外出たくないんだし、引っ張り出す奴の自己満足だよな」
そう言い放つ。
更なる捨て台詞で『つーか、アンタの説教のほうがずっと気分悪いんだがなw』
と言ってやるべきだったかと考えてたら、
湿疹男はスックと立ち上がった。
そして…