「じゃあ今から証明してやる」
と米屋を引っ張って米蔵に向かい、蔵からもう一俵担ぎ上げてのっしのっしと帰宅。
呆然とする米屋に
「お宅の息子は『持って帰れたら』くれると言った。なら二俵とも俺のもんだ」
と返却どころか上乗せを主張。
発狂した米屋が、子供の癖に生意気だ泥棒だ、と怒り狂う中、近所の人に騒ぎを聞かされた曽祖父が畑から帰宅。
米屋と祖父から話を聞き、分かった、と言うと表情を一変。
「子供とはいえ、男同士の約束。そちらが違えるのは勝手だが、うちの子には命に代えても守らせる!!」
と鬼のような形相で一喝。
普段、物静かで朴訥とした曽祖父のあまりの剣幕に血相を変えた米屋、慌てて落ち着け、落ち着けと繰り返した後に
「約束なら仕方ない。ただし二俵目は証明する為に使っただけだから」
と言ってそそくさと一俵を荷車に積んで帰っていった。
修羅場が去った事で気が抜け、へたり込む祖父の頭を撫でた曽祖父は、米が手に入った事より、相手が大人でも主張を
貫いた事を笑顔で褒めてくれたという。
以降、傲慢な米屋をやっつけた『二俵担ぎ』として祖父は馬鹿にされないどころか、一目置かれるようになった。
しかし噂を聞いた人に
「二俵も同時に担いで持って帰ったって本当か?」
と問われ
「一俵ずつだ」と答えると「なぁんだ」と残念そうな顔をされて、悔しい思いをしたそうな。