山陰なまりのおだやかな口調で
「そうかそうか、それじゃわしとちょっと話しようか」
そして、いきなり訳の分からない言葉でしゃべり出す祖父。
バカ嫁ポカーン。
「ドイツ語だ、遠くから大変だったなって言うたんだが、分からんかったか?」
また別の言葉でしゃべり出す祖父。
バカ嫁あわあわし出す。
「スペイン語だ、こっちは寒くて大変だろうって言うたんだ」
さらに別の言葉でしゃべる祖父。
バカ嫁真っ赤になって完全に沈黙。
「中国語だ、となりの国の言葉も知らんのかって言うたんだ」
このジイさん、大戦中は軍の諜報員として活躍していた人物なのだ。
俺を含めた親戚全員はその事を知っていた為、ニヤニヤしながら事の次第を見守っていた。
バカ嫁はいとこのいる離れに逃げ込み、以後帰って来る事はなかった。