数年前のこと。
父より連絡があって、次の日曜日、嫁さんと一緒に本家に来て欲しいとのとのことだった。
本家の跡継ぎになる従兄弟の家で問題が発生したらしい。
なんでうちまでと思ったが、思い当たる節がないわけではない。
自分は今では塾講師をしているが、俗にいう司法試験崩れというもので、法律に詳しい。
嫁さんも似たようなもので、同じ司法試験崩れ。
嫁さんの父(義父)は弁護士、義兄も一人は弁護士、もう一人は大学の法学部の准教授。
これは、従兄弟夫婦の離婚問題でも勃発したのか、自分と嫁さんの意見が聞きたいのかと勝手な想像をし、嫁さんと相談の上、折角の休みだが、本家に行くことを了解した。
本家といっても、それほど威張っているとか言うわけではないが、一応、祖父が当代という感じで、父の兄(伯父)がその後を継ぎ、問題となっている従兄弟がさらにその跡継ぎ、という予定になっている。
また、数年前には、従兄弟に長男(従甥)が生まれている。
本家に着くと、祖父、伯父夫妻、両親、従兄弟夫妻が待ち構えていた。
祖父から
「遠いところ、悪いね」
とあいさつがあり、伯父から、
「これを読んで欲しい」
と手紙を渡された。
それは、従甥が生まれた病院からのものだった。
その内容は、従甥が生まれた前後に、赤ん坊の取り違えがあった可能性がある、そのため、現在、調査をしている、
協力して欲しい、調査を担当する弁護士から連絡をする、というものだった。
また、手紙が届いた数日後、その病院の代理人と称する弁護士から電話があったそうだ。
しかし、現在検討中ということで、返事を保留しているとのことだった。
それで、自分や嫁さんに、どう対応すべきか意見を聞きたいといことで、自分たちを呼んだということだった。
個人的には、DNA鑑定などで、白黒をはっきりさせた方がよいと思ったが、さすがにこの問題を弁護士になりそこなった自分たちが決めるのは重すぎる。
それで、嫁さんの父に相談して欲しいと答えざるを得なかった。
まあ、祖父も、同じようなことを考えていたようで、嫁さんに頭を下げ、
「申し訳ないが、お父さんに話をつないで欲しい」
と頼んできた。
嫁さんは、もちろん了解して、手紙の写しを預かった。
その後…