どこでもドアが欲しかった

私は普通の人生を歩んできたと思っていた。しかし…

time 2016/11/24

私は普通の人生を歩んできたと思っていた。しかし…

私は、普通の人生を歩んできたと思っていた。
普通の家に生まれて普通の学校に通って、普通に腰かけ就職して普通に結婚して、普通に子供を産んで、普通の専業主婦として生きてきたと思ってた。
娘が高校を卒業して自立するまでは…。

娘が残した、A4の印刷用紙に書かれたナグり書きの手紙は要約するとこんな内容だった。
・電車の中でキーホルダーを落としただけで怒鳴られた
・「頂きます」を「もらいます」と言っただけで叩かれた
・自分のお小遣いでお菓子を買っただけで「甘いものは身体に悪い」と言われて捨てられた
・兄弟の中で私だけ家事を言い付けられていた
・お祭りで私は浴衣を着せてもらえなかったのに弟は着せてもらってた
・私は門限を過ぎたら締め出されたのに弟は小言を言われるだけだった
・私は50番以内に入らないと叱られてゲームや携帯を没収されたのに弟は120番前後でも怒られなかった
・でもきっとお母さんは私と弟の待遇の差を訴えても理解してくれない

どうやら夫がアパートの保証人になって敷金やその他諸々の費用も払ったようで、就職して自立した娘はあれから一度も家に帰ってきてない
当時は、私に黙ってこそこそと動いていた夫に文句を言いたかった。
でも娘に見限られた上に夫にも嫌われたら私の心がどうなってしまうかわからなかったから何も言えなかった。
それでも夫は優しかった。
最後まで私に今までと変わらないように接してくれた。
夫は早世してしまったけど、残してくれた貯金のおかげで息子の大学の学費や私の今後の生活で困ることはなかった。

夫の遺品から娘の住所を知って、夫の死を手紙で伝えたけど
「来なくてもいいと言われている」
と返事されて、結局娘が夫の葬式に来ることはなかった。

これからの人生は息子夫婦を生き甲斐にして生きていこうと思っていた。
しかし…

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