母はこれまで見たことのないような般若のような顔になり、
「いつ!いつからきてないの!」
と怒鳴りつけた。
「三ヶ月くらい・・・」
「売女の子が!どこで作ってきた!」
私は頭が真っ白になった。
「言え!相手は誰!吐け!吐きな!はやく!」
頬を何度か叩かれて、私は怖くなって全力で否定した。
「違う!なにもしてない!なにもしてない!」
「嘘つけ!」
「嘘じゃない!違う!なにもしてない!」
必死に否定していると、母に本気でガツンと頭をナグられた。
クラクラする頭で母に無理矢理引っ張られ、靴も履かずに制服姿で
産婦人科に連れて行かれた。
私が必死に違う!違う!なにもしてない!と訴えるのを他所に、
母は私が妊娠しているかもしれないと受付に告げて診察させられた。
先生はおじさんで、他に看護師が2人いて、母まで見ていて、
あんな羞恥を受けたのは初めてだった。
診察も激痛だった。
指を入れられ、機械を入れられ、マタから血が流れていた。
結局セイリ不順と診断されたが、私はそのままストレスでセイリがこないまま、
高校生で閉経した。
女性ホルモンが出ないせいで、高校生にして更年期のような症状に悩まされた。
ホルモン剤は出たものの、女らしく育つ暇もなかった身体はよく男と間違えられる。
父は今になって、母だと思ってた人は母ではないことを伝えてきた。
父は浮気をして愛人との子をなした。
それが私。
愛人は大卒のエリートの女性で父の出張先にいた人らしい。
私の母は高卒で、だから私にエリートを求めたのかもしれない。
母に売女の子と呼ばれた時からなんとく察していた。
でももっと早く知りたかったよ。
無条件に愛した母がそんな私を憎くて仕方なかったんだとしたら、母には謝っても謝っても足りない。
もっとはやく母の愛情を受けてはいけないんだと気づいていれば、母の負担になることもなかったのに。