「別にいいよ。ホームに入るなら金は出す。その代り入所先は俺が決めていいよね?」
と言ったら満面の笑顔で喜んでいた。
「但し、調べられる限り最悪で劣悪な環境の最も安いホームを探すつもりだから。
そういうところは常に空きがあるし、すぐに入れそうだもんな。
そこにあんたを捨てるのが俺の夢だったんだ」
と言ってやった。
実はそれはずっと考えていたことだった。
もしも実母が現れたら、もしもそれが最低に落ちぶれた実母だったら、
家族を守るにはどうしたらいいだろう。
そう思った時に、それしかないと思ってた。
結婚する時、妻には実母のことは話してある。
こういう日がくるかも知れないことも話した。
その時の対処については俺に任すとも言われていた。
実母は以来現れない。
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