どこでもドアが欲しかった

気がついたら俺は結婚していたらしい…

time 2016/12/04

気がついたら俺は結婚していたらしい…

数年前、気が付けば俺は結婚してた。

この気が付けばってのは、冗談でもなんでもない。 
ホントに気が付いたら結婚してたんだよ。 

当時俺は21歳の会社勤め。 
高校卒業して就職、地元の小さな企業に勤めてアパートで一人暮らしをしてたんだが、ある日実家に帰ると、家の中には見たことない女性が座ってた。 
誰だろ、綺麗な人だなってのが、俺の最初の感想だった。 
俺は父に、この人誰って聞いた。 
そしたら父はかなり驚いていた。 
『お前何言ってるんだ?』って言われてた。 
そしたら、その女が笑顔で言ってきた。 
『お帰りなさい、俺さん』って。 
何で俺の名前知ってるのか聞いてみたら、その女は笑いながら言ってきた。 
『何でって、だって私は俺さんの妻でしょ?』

この女は何を言ってるのかと思った。 
その時、それはドッキリか何かかと思ったし、家の中を見渡してみた。 
だって、そん時の俺は彼女すらいなかったし、当然結婚なんてしたこともない。 
おまけにアパートで一人暮らしだったから、そもそも結婚していたとしても家には誰もいない。 
何かの冗談かと思った。 
でも、両親とその女は至って真面目に、というより、極自然に家族として成り立ってた。 
俺は立ったまま固まって家の中の景色を茫然と見てたんだけど、まるで長い付き合いかのようにテレビを見ながら母と話してたし、父に茶も入れてた。 
むしろいつまで経っても座らない俺に女不思議そうな顔を見せて、『座らないの?』って聞いてきた。

そっから我に返って、一気にファビョッた。 
『その女は誰だ』『なんで俺の実家にいるんだよ』『てか妻ってなんだよ』って一気にまくしたてた。 
でも、両親もその女もキョトンとしてた。 
最初は笑っていた両親も、本格的に騒ぐ俺を見て異常さを覚えたみたいだった。 
体を押さえられて『落ち着け』って何度も言われた。 
それには、その女も加わってた。 
『私が分からないの!?』ってずっと言ってた。 
何度も言うが、俺は結婚なんてしていない、した記憶なんてない。 
高校卒業からそれまで、ずっと一人暮らし働いてて、たまに実家に帰るくらいだった。 


友達と飲みに行くことはあっても、女と飲みに行ったことはない。 
なのに、両親もその女も、その女が俺の妻とか言ってる。 
意味が分からなかった。 
自分の記憶を疑ってみたが、やっぱりその女なんて知らない。 
両親の顔を改めて見たけど、やっぱり俺の両親だった。

しばらく騒いだところで、一度座って話すことになった。 
父は、改めて俺に『Aさん(その女、仮名)を覚えていないのか?』と聞いてきた。 
俺は当然『それ以前に知らない』と断言した。 
そしたら、Aは泣き始めた。 
おまけに母まで泣き始めた。 
父は、すんげえ難しそうな顔をしてた。 
なんか俺一人悪者になった気分だった。

すると…

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