どこでもドアが欲しかった

気がついたら俺は結婚していたらしい…

time 2016/12/04

気がついたら俺は結婚していたらしい…

しばらく何かを考えていた父が、家の奥に行ってからアルバムを持って来て、俺に見せた。 
そのアルバムの中には、俺の写真があった。 
そして、俺の隣にはAがいた。 
どうやら旅行の写真のようだが、写真に写る場所(有名な温泉地)なんて行ったことない。 
なんだコレって思いながらページをめくっていったら、結婚式の写真まであった。 
しつこいようだが、俺は本当に結婚なんてした記憶がない。 
なのに、その写真の中の俺は、Aと結婚してた。

アルバムを見てたら父が説明してきた。 
1年くらい前に、俺がAを連れて家に来た。 
そして、結婚することを告げたらしい 。
その時から1年前に、俺は結婚したとか。 
ただ、その時の俺は仕事が凄く忙しかったから、しばらくAは俺の実家で過ごすことになったらしい。 
それは、俺が両親に頭を下げて言ったとか。 
Aも涙ながらに言ってきた。 
会社の友人から俺を紹介され、俺と食事に行き、付き合い、結婚した。 
自分の両親は他界していて、『俺が一生お前の家族になる』とプロポーズしてくれたと。 
何度も父とAから『本当に覚えていないのか』と言われた。 
でも俺には、まったく覚えがなかった。 
1年前と言えば、確かに仕事が凄まじく忙しかった。 
会社のプロジェクトの企画を任され、ほぼ徹夜続きの毎日だった。 
だけど、だからこそ、そんな時期に結婚なんて出来るはずがなかった。 
でも、結婚式の写真には、俺の職場の上司や同僚、地元の友達まで映ってた。 
ドッキリにしては写真の完成度が高いし、大掛かり過ぎる。 
何より、堅物だった俺の父がこんなリアルな演技なんて出来るはずもない。 

なんか急に怖くなってきた。 
両親が両親じゃないように感じてきた。 
そして俺が俺じゃないように感じてきた。 
俺は実家を急いで飛び出し、自分のアパートに戻った。 
だけど両親は俺のアパートを知っているから、最低限の荷物を持って近くのビジネスホテルに逃げ込んだ。 
その間も俺の携帯は鳴りっぱなしだった。

それから俺は必死に自分の頭の中を整理してみた。 
だけどやっぱり結婚した記憶なんてない 。
だから俺は確かめてみた。 
地元の友達に電話した。 
『俺は結婚したのか』と聞くと、即答で『何バカなこと言ってるんだ。当たり前だろ』と返された。 
次に仲が良かった仕事場の同僚に電話をしてみた。 

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