どこでもドアが欲しかった

気がついたら俺は結婚していたらしい…

time 2016/12/04

気がついたら俺は結婚していたらしい…

そっからAと二人暮らしを始めたけど、Aは俺より1つ年上だった。 
そして俺の好物とかを知ってたし、俺の週刊、趣味を熟知しているようだった。

最初の方こそギスギスした毎日だった。 
何しろ全く知らない女といきなり同居する気になったんだ。 
そんな女を『俺の妻』と言って暮らすことになっても完全に受け入れることなって出来ない。 
毎日家に帰るのが億劫だった。 
でも、精神的にキツイのはAも同じだったと思う。 
俺の顔を見て話しかけてくるけど、それが俺に分からないことだったりすると、この世の終わりみたいな顔をして『ゴメンナサイ』って謝って来た。 
Aからしたら地獄だったかもしれない。 
だって、新婚でずっと俺の実家にいて、ようやく俺と生活出来ることになったのに今度は俺に他人扱いされたわけだし。 
悪いと思ったから、何度か離婚を切り出したけど、その度に大泣きしてAは断って来た。 
Aの得意料理で俺が好きだったものと言って出された食事でも、俺は初めての味だったりした。 
二人で行った場所と言って案内された場所でも全く知らなかった。 
夜の生活なんて到底無理だった。 
まったく知らない女とヤルのも気が引けて、全然手を出せなかった。 
何度か『我慢しなくていいよ』と言われたけど、やっぱり無理だった。 
何というか、見知らぬ女を無理やりしてる気分になって罪悪感がハンパなかった。 
風俗と割り切れば行けるかもしれないと思ったが、それも無理だった。 
そんな日がしばらく続いた。

しばらく一緒に生活して、俺はかなりAと話すようになった。 
Aもまた泣くことが少なくなって、毎日笑顔で過ごすようになっていた。 
時々悲しそうな顔をするけど、それ以上に笑顔が増えた。 
Aが知る俺との想い出は、俺が知ってるAとの想い出とは違い過ぎるだろうけど、Aはそれでもいいと言っていた。 
これまでの全てがなくなったのなら、また一から作り直せばいいとも言ってくれた。 
そんなAに感謝したし、幸せにしようと思った。 

だから俺は、Aにプロポーズした。 
もちろん、Aからしたら二回目のプロポーズだし、戸籍上だと俺とAは既に夫婦だったから妙な話ではあったけど、でも、一つのケジメとして指輪も買ってプロポーズした。 
Aは最初かなり驚いていた。 

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