たぶん1分くらいだと思うが、すごい長く感じた。
すると、突然また足音がしだして、今度はトイレの方に近づいてきた!!
俺はとっさに武器になるものを探した。
トイレクイックル、芳香剤、ちいさなゴミ箱・・・
ダメだ、どれも武器になりそうにない。
そもそもドアにカギがかかっているから、そう簡単には開かないんだが。
足音がトイレの前を通りすぎる時、俺の緊張は極限に達した。
よくマンガとかで汗がポタポタ垂れるけど、 本当に床に汗がポタッと垂れたのは初めてかもしんない。
そのくらいすごい汗だった。
足音はそのままトイレの前を通り過ぎて、奥の部屋へと向かっていった。
今度は両親の寝室の方に入っていったようだ。
実はうちの大事なものは、寝室のたんすの引き出しの一番上に入っている。
たぶん泥棒に見つかるのも時間の問題だろう。
(ここで俺が出ていけば盗まれるのは止められるかも)
家の大切な財産が奪われかねない状況になった事で、 今まで逃げ一辺倒だった俺の心境に変化が生まれた。
今出ていけば、大切なものは盗まれずに済むかもしれない!
けど、俺の命の保障はない。
いくら自宅警備員とはいえ、命は惜しい。
っていうか、怪我するのだって嫌だ。
俺はたまに部屋でなんちゃって筋トレするくらいで、 ガタイも良くないし、もみ合いになったらたぶんやられる。
ダメだ、父さん母さん、俺は二人の大切な財産を守れそうにないよ・・・。
そんなこんなで泥棒が寝室でゴソゴソしている間、 俺はトイレの中で一人で葛藤していた。
出ていけば(たぶん)やられる。
出ていかなければ財産が奪われる。
どうする、俺、どうすんのよ、俺?
なんかどっかのCMのキャッチフレーズが頭に浮かんだりしつつ、 結局俺は泥棒が寝室から出てくるまでの間、取り押さえにいけなかった。
ダメだ、たぶん通帳とか母さんの指輪とか、全部やられたに違いない。
ミシミシと足音が寝室を出て、廊下を玄関の方に向かって歩いていくのを聞いて、 俺は絶望感に浸っていた。
その時、予想外の出来事が起こった!