俺は勢いよくドアを閉めた後、そのままドアノブを強く握りしめて、 開かないように力をかけ続けた。
これもその瞬間は、閉じ込めようとか意識してた訳じゃない。
ただ単に怖くて「こっち来ないでー!!」状態だっただけだ。
オッサンは一瞬何が起きたのか分からないようだったけど、 すぐに俺の部屋のドアを開けようと、ドアノブを下げようとしてきた。
(うちのドアは、棒みたいな部分を下げて開けるタイプ)
必死にドアノブを抑える俺。
ここでドアを開けられたら、俺はコロされるかもしれない。
そう思うと、火事場のバカぢからじゃないけど、凄い力が出た。
何回かガチャガチャやられた後、一瞬ドアノブにかかる力がなくなった。
ノシノシと部屋の中を少し歩きまわる足音。
たぶん、俺の部屋に他に出口が無いか探してたんだと思う。
けど残念な事に、俺の部屋は人が通れないくらいの 採光用の小さな窓が2つあるだけで、他に出口はない。
採光用の窓は鉄格子っていうか、柵みたいのがついてたから、 たぶんそこからは簡単には出られないはず。
低いけど、一応2階だしね。
で、他に出口が無い事を悟ったのか今度はもの凄い力でドアノブを開けようとしてきた。
俺も必死の抵抗。
絶対に開けさせてはならない。
二人とも超必死だったと思うんだけど、二人とも無言。
「開けろやゴルァー」とか怒鳴られるかと思ったけど、超無言。
なんか大の大人が二人で無言でドアノブで争ってる光景は、割とシュールだったと思う。
後から考えてみたら、俺はこの時に大声だせば良かった。
近所の人が助けに来てくれるかもしれなかったしね。
でもそん時はそこまで考えられず。
とにかく必死!
ちょっと部屋の中のモノに八つ当たりとかされないか心配だったんだけど、これは大丈夫だった。
泥棒って自分の利益にならない事はしないのかな。
しかし泥棒のオッサンはちょっと力を抜いてから突然力をかけたりとか、 たまにトリッキーな事をしてきてたから気が抜けなかった。
ずっと全力でドアノブを抑えていた。
たぶん3~4分は争ってたんじゃないだろうか。
「ピンポーン」