どこでもドアが欲しかった

中学生の頃、極度の人見知りだった。ある日父「B君と遊んで欲しい」→結果…

time 2016/12/09

中学生の頃、極度の人見知りだった。ある日父「B君と遊んで欲しい」→結果…

中学生の頃の出来事。

当時私はいじめられていたことと、思春期の絶頂期で対人恐怖症から来る酷い人見知りになっていました。
特に母親とは話せば必ず衝突するという状態で非常に不仲でしたが、父親とだけは関係が良好で、父親の前だけでは素直になれていました。
というのも父親は、非常に人情味や正義感に溢れた人で、頼りがいのある一方で、自分の意見を押し付けたりしない優しさを持っており、一緒に居ると気持ちが楽になったからです。
そんな父親は自営業をしていたのですが、人柄のおかげで周りや同業者、下請けの方からも大変慕われていました。

前置きが長くなってしまってすみません。
そんな感じで父親以外とはうまく話せないような日々を過ごしていたある日、たしか夏休み終わり位だったと思います。
父親から呼ばれ、今日AさんとAさんの子供Bが家に来るからB君と遊んであげてと言われました。
人見知りがあるから無理と答えたら、
「Aさんは最近奥さんを病気で亡くしたばかりで、B君はずっとおばあちゃんのところにいて寂しい思いをしたから、一緒にいてあげるだけでいいんだよ」
と言われ、説明されてる間にAさん達が来てしまいました。

Aさんは下請けの会社の二代目で、かなり幼少の頃遊んでもらった記憶があり、当時はかっこ良くて大好きなお兄さんでしたが、久しぶりに見た姿は、
人ってこんなに変わるの?と言うくらい老けてくたびれて見えました。

じっと見るのも失礼かなと思うくらいの痛々しい変わりように挨拶も出来ずにいたら、 かなり弱々しい感じで
「今日はBを宜しくね」
といわれました。
B君はAさんの後ろに隠れており、ペコッと頭を下げました。
小学三年生と聞きましたが、一年生くらいの体格で本当に小さな子でした。

内心、パニックでしたが、父親に促されるまま近所の公園に出掛けました。
人見知りですし、久しいこと他人と会話らしい会話もしてないし、小さな子を相手にするなんて出来ないし、でもお母さんを亡くした子に少しでも優しくしたい、けどどうしていいか分からない!気持ちだけが焦りました。
するとB君が小さな声で
「若いお姉さんと公園初めてだよ。嬉しい。手繋ごう」
と笑いかけてくれました。
恐る恐る手を繋いだら、ギュッと握り返してくれて、そこからぽつりぽつりと話してくれました。

B君のお母さんは、B君を生んでからずっと入退院を繰り返し、ほとんど遊んでもらえなかったこと。
いつもおばあちゃんといたこと。
おばあちゃんはちょっと体が悪く、だからB君がたくさんお手伝いをしていたこと。
おばあちゃんは学区外に住んでいたから友達があまりいないこと等でした。
その時、無神経な私は寂しくないの?と聞いてしまいました。するとB君は少し考えてから、
「寂しいよ。凄く。でも仕方ないよ」
と笑って言いました。
その瞬間に何故か私は、自分は甘えて反抗してるだけなのに、こんな小さな子はこんな小さな体で我慢してるのに! こんなに傷ついてる子に何も言葉をかけてあげられないなんて自分の不甲斐なさ等色々な感情がこみ上げ、B君を抱き締めながらわんわん大声をあげて泣いてしまいました。

B君は始めきょとんとしていましたが、そのうち
「お姉ちゃん泣かないでー!」
と言いながらギュッと抱きついてきて、二人でわんわん泣きました。

多分30分くらいそうしていたと思います。
その間私は
「B君は子供なんだから寂しい時は寂しいっていいんだよー!」とか
「B君はもっと嫌なことは嫌って言っていいんだよー!」
とか言ったと思います。
B君はB君で
「僕がいい子にしてたらお母さんの病気治るって言われたから頑張ったのに治らなかったんだよー!お母さんも神様のも嘘つきー!」
とか
「お母さんに会いたいよー!でもお母さんなんて嫌いだよー!」
とか言っていたと思います。
私は
「お母さんは神様と一緒にB君を見てるよー。お母さんも神様もB君のこと大好きだよー!私も好きだよー!」
とか本当にわけわからないことを喚いていたと思います。

そんなことをしていたら、Aさんと父親が走ってきて、Aさんが泣きながら私とB君ごと抱き締めて
「○○(多分奥さん)が死んで初めてBが泣いた!Bずっとごめんな。Bこれからは父さんしっかりするから!B!B!」
と言い、B君がまた大泣きして、私も何故か大泣きして三人で暫くそうしていたらB君が
「喉乾いたよ。」と言いました。

すると父親が、そろそろお昼だからと言ってファミレスに行き皆で食事をすることになりました。
皆、酷い顔で顔を見合わせて笑いながら一度家に寄り顔を洗ったりしました。
その時Aさんのお腹が鳴り
「どんな時でも腹は減るなぁ」
とおどけました。
皆で笑い、たくさんご飯を食べてから父親とAさんは話があるとのことで、また改めてB君と公園へ行きました。

B君は一人遊びばかりだったらしく、何でも遊びに変えるのが上手で、行き慣れた公園がとても楽しかった記憶があります。
公園ではたまにお母さんと呼ばれたりして、ああこの子はお母さんとしたかった事をしてるんだなと涙ぐんだりしました。
別れのときには、もう悲しくて悲しくて、また絶対会おうねと約束して、B君がギュッと抱きついてきて小さな声で
「お姉ちゃん、ありがとう。」
と言いました。
Aさんは涙を流しながら父親に頭を何度もさげ私にもありがとうと言って帰りました。

その後…

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